【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第4章】ザフィーラやヴィクトーリアたちとの会話。
【第6節】ヴィクトーリアの個人的な問題について。
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や言い訳めいた口調でそう前置きをしてから、ヴィクトーリアの視線に促されるようにして、ようやく「本来の質問」をします。
「先程、フェルノッド陸曹が自分は分家筋の出身だと答えた時に、ヴィクターさんは何やらとても安心した表情を浮かべていたように見えたのですが……もし、フェルノッド陸曹がウベルティ本家の出身だったら、何か問題でもあったのでしょうか?」
「……細かいトコロまで、よく見てるわねえ……」
ヴィクトーリアは思わず、感心したような、少し呆れたような、何やら痛いところを突かれて困ったような、微妙な表情を浮かべました。
そして、一つ長々と溜め息をついてから、彼女はようやくこう語り始めます。
「さっき、私はバラム陸曹に『当家の当主は、代々おおむねミッド人の女性を妻に迎えて来た』と言ったけれど……わざわざ『おおむね』と断わったからには、当然に例外もある訳で……実は、私の曽祖父テオドールは、当時のウベルティ本家の当主の娘を、嫡子の姉に当たる女性を妻に迎えたのよ。だから、今のウベルティ本家の当主は、私の父のハトコに当たる人物なの。それで……何と言うか、向こうの当主の息子は、当然に私のマタハトコに当たる人物なのだけれど……」
《マタハトコなんて、もう他人じゃん! そんなコト、気にしてたの?!》
《名門の家柄だと、マタハトコは、まだ「親戚」の内なんですかねえ?》
双子は念話で、互いにそんな感想を漏らし合いました。
しかし、ヴィクトーリアにとっては、よほど言いづらい話なのでしょうか。彼女はそこでふと口を閉ざしてしまいました。その様子を見て、エドガーはやや苦笑を浮かべながらも、主人に配慮して少し声を潜め、こう言葉をつなげます。
「実は、もうかれこれ9年も前のことになるのですが、ウチのお嬢様と、お嬢様のマタハトコに当たる『ウベルティ本家当主の御子息ミルコ様』との間に、縁談が持ち上がったことがあったんですよ」
「えんだん……って、結婚の話?」
「この話、あまり他人には言わないでね。恥ずかしいから」
「で? それ、振っちゃったの? 超優良物件なのに!」
《男性のことを『物件』とか。カナタ、その表現は少々はしたないですよ。》
ツバサは心の中で苦笑しながらも、軽くたしなめるような口調で念話を送りました。
それでも、ヴィクトーリアはその表現を気にする様子も無く、途切れ途切れにこう言葉を続けます。
「いや。別に、どちらからどうしたという訳でもないんだけど……お互い親に言われて、一応は『お見合い』のような形で、二人だけで食事とかもしてみたんだけど……。何て言えば良いのかしら? 『一目見て、ピンと来るモノが何も無かった』と言うか……。まあ、後から聞いた話だと、それも『お互い様』だった
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