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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第4章】ザフィーラやヴィクトーリアたちとの会話。
 【第5節】中世ミッドチルダの歴史について。
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世界から来た移民たちは、大半が旧来の苗字と個人名をそのままミッドの戸籍に登録したようですが」
「それは……一体どんな意図があって、そのような法律になったのでしょうか?」
「基本的には、他の世界からの移民に対しては『過去と決別する権利』を認めつつ、その一方で、ミッドの内部では『一人一人の住民に対して、誕生から死までの追跡可能性(トレーサビリティ)を保持する』というのが、この戸籍法の本来の意図です」

「その……過去と決別する権利、というのは……?」
「古来、ミッドに来る移民の中には、独裁政権の弾圧から逃れて来た亡命者や、無実の罪で故郷を追われて来た人などもしばしば含まれていたのですが……彼等の出身世界の側から見れば、少なくとも名目上は、彼等は犯罪者なのですから、身元が割れれば当然に『引き渡し要求』が来ます。
しかし、ミッドは旧暦以前の時代から、ずっと移民を奨励していましたから、『ミッドチルダは法と秩序の下で、万人が「その人に相応の」権利と自由を享受することのできる世界である』というイメージを維持するためにも、そうした要求はすべて退け、個々の移民に対する『追撃の手』を振り切ることが必要でした。
 そのため、ミッドチルダ独立政府は、すべての移民に対して『改名して過去と決別する権利』を広く認め、引き渡し要求に対しても『この世界に、そんな名前の人物はいない』と突っぱねることにしたのです」

 エドガーは、さらに語りました。
「その一方で、そうした移民が本当に『性質(たち)の悪い犯罪者』である可能性もありましたから、制度として、一人一人の追跡可能性(トレーサビリティ)はどうしても保持する必要があり、そのため、フランカルディ家の指導もあって、『ミッドの内部では、安易な改名は認めない』という内容の法律になりました。
 実際のところ、これはなかなか出来の良い法律で、後に、ヴァイゼンやフォルス、フェディキアやマグゼレナなどの諸世界も、これと全く同じ内容の戸籍法を採用しています。
 それでも、ベルカの(たみ)にとっては、世代ごとに分家が苗字を変えてゆくのはごく自然なコトでしたから、未成年のうちに親たちと一緒に移民して来た人々の中には、どうして我々の世代には『当然の権利』が認められないのか、と憤慨(ふんがい)する人たちもいたという話ですが……。
 幸いにも、大半の移民は『(ごう)()っては郷に従え』という大原則をそのまま受け入れてくれたため、深刻な社会問題にまでは発展しなかったのだそうです」

 そこで、ツバサは確認を取るような口調で、さらにこう問いかけました。
「ということは……フランカルディ家の〈四大分家〉とやらが成立したのは、その法律が施行される以前のコトだったのですか?」
「ええ。当時のフランカルディ家は決して『総督の特権』を振り
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