【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第4章】ザフィーラやヴィクトーリアたちとの会話。
【第5節】中世ミッドチルダの歴史について。
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
せんし、さらにもしかすると、ベルカ聖王家にもその旨を報告しており、聖王オリヴィエもどこかでそれを聞き及んでいたのかも知れませんが……いずれにせよ、ミッドの温暖化と海面上昇それ自体は、純粋に自然現象であり、何ら人為的なものではありません」
「しかし、今のお話だと……当時、フランカルディ家が背負った負担というのは、とんでもない量ですよね?」
「そうですね。当時、フランカルディ家は、七百年余に亘って蓄えた莫大な富の大半をわずか数十年の間に使い潰し、その広大な所領の大半を人々に無償で分け与えた、と伝えられています。その上、さらに、フランカルディ家はさまざまな貴族特権をみずから率先して放棄し、数多のベルカ貴族たちに『新たな時代における〈名門〉の模範的な姿』を示して見せました。
こうしたフランカルディ家の尽力があったからこそ、ミッドでは内戦も起きず、移民の流入による社会的な混乱も最小限に抑えられ、貴族制度そのものも廃止されて、社会全体の近代化にも無事に成功したのです。
中には『そんなの、ただ聖王の命に従っただけだろう』などと言う人もいるようですが、すでに死んでいる人間の命令に従って、自身の破滅をも辞さない覚悟でそれを実行するというのは、やはり並大抵の覚悟でできることではありません。
実際に、この時代に『土地と財産と特権の大半』をみずから手放した結果、フランカルディ本家は、その後、ミッド〈中央部〉の北西区画、アンクレス地方における一個の〈名門〉に過ぎない家系と成りました。さらに、〈九世界連合〉の設立後は、もう歴史の表舞台に出ることも無く、重要な仕事もすべて四大分家に任せて……それからはもう、個人に喩えて言えば、『息子たちに後を譲って隠居した老人』のような、質素な生活を続けているのだそうです」
エドガーの説明を聞くと、双子は揃って、思わず溜め息を漏らします。
「世の中には、スゴい人たちがいるもんだなあ……」
「全く……ミッド人、全員の恩人だったんですねえ……」
しかし、それを聞くと、エドガーはちょっぴり悪戯っぽい笑顔を浮かべて、こう言葉を続けました。
「まあ、『現在の所有地の面積は、かつての所領の百分の一以下だ』とは言っても、その『かつての所領』が、ミッド〈第一大陸〉の実に三分の一に及んでいた訳ですからね。今でも、『アンクレス地方の半分以上』がフランカルディ家の所有地となっています」
「えええ?!」
「それは! 実際には、かなり広大な土地ですよね?」
「はい。ほとんど2万平方キロメートルに達していると言いますから、フランカルディ家が今でも『ミッドで最大の大地主』であることには変わりがありません。『特別な贅沢』さえしなければ、何も働かなくても、土地の賃貸料だけで一族全員が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ