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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第4章】ザフィーラやヴィクトーリアたちとの会話。
 【第4節】第2管理外世界オルセアについて。
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「前々から『機会があったら、一度、誰かに訊いてみたい』と思っていたのだけれど、そんな立派な方が、どうして今は管理外世界の現地駐在員なんかをやってらっしゃるの? いや。『なんか』という表現は差別的で良くないのかも知れないけれど」
「さあ……。私たちも、まだそこまではお訊きしたことが無いんですが……」
 ツバサはそう言って、またちらりとザフィーラの顔を覗きました。
「オレも詳しいコトは知らんが……彼女は自分から『転属願』を出した、と聞いているからなあ。少なくとも、左遷の(たぐい)でなかったことだけは確かだろう」
 新暦65年の〈闇の書事件〉は、その「内容」だけではなく、すでにその「存在」そのものが第一級の特秘事項となっているため、ヴィクトーリアたちよりも下の世代になると、もう『その年の暮れに〈第97管理外世界〉で何か重大な事件が起きた』ということ自体を知りません。そして、これからも知られてはなりません。
 そこで、ザフィーラは小首を(かし)げながら、巧みにそう(とぼ)けて見せたのでした。

 ザフィーラはさらに、この話題を掘り下げられることを避けるべく、本当に感心した口調で全く別の話を仕掛けます。
「それにしても、エドガー。お前は、オルセアに関して妙に詳しいな」
「はい。私も十代の頃に、ふと自分のルーツが気になって、調べてみたことがあるのですが、実のところ、私の体には、ベルカ系とミッド系の他にも、オルセア系とルーフェン系とマグゼレナ系とデヴォルザム系の血がそれぞれ十六分の一ずつ混じっていました。それで、またさらにいろいろと調べてみたため、それらの諸世界に関しては普通の方々(かたがた)よりもいささか詳しくなってしまった、という次第です」
《いやいや。これはもう「いささか」ってレベルじゃないよネ?》
《ええ。全くです。》
 カナタとツバサは声には出さずに、そう語り合いました。

「十六分の一、四世代前というと……旧暦の末頃か?」
「はい。私の母方祖父のそのまた母方祖父は、その時期には数が少なかった『オルセアからの亡命者』で、一方、父方祖母のそのまた父方祖母は、本来は武者修行のつもりでルーフェンからミッドに渡って来た武術家だったようです」
「ああ。その(えん)で、クレアは早々にルーフェンへ渡ったのか」
「はい。その武術家の孫娘で、私たちの大叔母に当たる女性も、先にルーフェンへ渡っていましたから、妹の場合、直接的には『その大叔母を頼って行った』という形ですね。
 まあ、そんな訳で、ついついオルセアの話が長くなってしまいましたが、そろそろ話を本題に戻しましょう。中世後期の、ミッドチルダの話です」
 エドガーはそう前置きをしてから、ベルカ世界から大量の移民を受け入れた後のミッドチルダについて、再び語り始めました。



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