【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第4章】ザフィーラやヴィクトーリアたちとの会話。
【第4節】第2管理外世界オルセアについて。
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
それでなくとも、旧暦の時代には管理局はまだ〈統合戦争〉で手一杯でした。東のデヴォルザム、西のリベルタ、南方の四世界同盟。これらの敵に打ち勝たなければ、管理局システムの存続すら危うい。まだそんな状況だったのです。
そして、その戦争が終わり、〈中央領域〉が統合されて管理世界の数も22個に増え、暦が新暦に切り替わってからも、管理局の歴史は決して順風満帆なものではありませんでした。人員も予算も限られている中で効率的に事を成そうと思うと、それぞれの事柄に優先順位をつけて上から順に片付けて行くしかないのですが、当時の管理局にとって、オルセアの内戦は決して順位の高い案件ではなかったのです」
これには、ツバサも思わず悲しげな声を上げます。
「いや。でも……実際に、オルセア全体では何の罪も無い人々が、おそらくは、毎日幾千人も殺され続けていた訳ですよね?」
「ええ。確かにそのとおりなのですが、他の世界には、それよりさらに危機的な状況が幾らでもありました。しかも、あの内戦には、比較的小型の質量兵器が使われていただけで、ロストロギアの類は一切関与していません。
ですから……とても嫌な言い方になってしまいますが……あの内戦は、もし完全に放置したとしても、ただオルセアが勝手に自滅するだけで、他の世界へ『飛び火』をする心配がほとんどありませんでした。そういう意味で、管理局にとっては優先順位の低い案件だったのです」
それを聞くと、ツバサはがっくりと首をうなだれて落ち込みました。
彼女にとって、『目の前で困っている人々をそのまま見捨てる』というのは、ただ考えるだけでも充分に辛いことだったのです。
すると、今度はまた、カナタがふとこんな疑問を口にしました。
「え? でも……だとすると、逆に、オルセアの内戦って一体どうやって終わったの? 今までの話だと、『終息に向かうキッカケ』がどこにも見当たらないんだけど?」
「いくら優先順位が低いからと言って、管理局も決して『本当に何もしなかった』という訳ではありませんよ」
エドガーのその言葉に、ツバサもようやく面を上げます。
「新暦も40年代に入って、人員や予算に多少の余裕が出て来ると、管理局はまず……自分では直接に介入することができないので……非政府系組織、いわゆるNGOを介してオルセアに働きかけました。つまり、もっぱら『オルセアから見て最寄りの世界である』フォルスやヴァイゼンのNGOと連携して、オルセアの地上に人道支援目的の医療施設を造り、『使い捨て』にされた負傷兵や小児たちを収容して、その多くを管理世界へと移送したのです。
彼等はそこで初めて近代的な教育を受け、他の世界と比較することで自分たちの世界そのものを相対化し、『自分たちの故郷の一
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ