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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第4章】ザフィーラやヴィクトーリアたちとの会話。
 【第4節】第2管理外世界オルセアについて。
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る、ほんの10年ほど前のことです。
 当初は、まだ『各地でテロが頻発し、治安が悪化している』という程度のことだったのですが、武器を手にした民衆は、やがて、その人数(かず)武力(ちから)で、領主を始めとする貴族層を次々に打ち倒して行くようになりました」
 エドガーは何やらとても悲しげな口調です。

 その理由が気になって、カナタはまた、ふとした疑問を口にしました。
「え? でも……その手法はともかくとして……腐敗した貴族層が排除されてゆくこと自体は、良いコトなんじゃないの?」
 カナタは元々、「貴族」という存在に特別な好感など持ってはいません。
「原則論としては、確かにそのとおりですが、それでも、物事には『然るべき順序』というものがあります。例えば……そうですね。今、住んでいる家が古すぎて、もうリフォームではどうにもならないと解った時、その家に住んでいる人は、まず何をするべきでしょうか?」
「え? まずは……転居先を探す、とか?」
 カナタの口調は随分と自信の無さそうなモノでしたが、それでも、エドガーはその言葉にゆっくりとうなずいて見せます。
「そうですね。まずは新居を用意して、大切な家財道具をそちらへ移してから、古い家屋を取り壊すべきなのです。いくらゴミが溜まり、雨漏りがして、腐った床板の上を黒い虫が這い回っていたとしても……いきなり悲鳴を上げて、その家を丸ごと焼き払ったりしたら、その人は次の日から一体どこで寝泊まりをすれば良いのでしょうか?」
「あ〜。その晩から、橋の下で野宿だ」
「いわゆる『ホームレス』になってしまう訳ですね?」

「そのとおり。オルセアの人々がしたのは、まさにそういう作業だったのです」
 エドガーは二人の言葉にうなずき、また少し悲しげな口調で話を続けました。
「やがて、既得権益の上にただ胡坐(あぐら)をかいていただけの堕落した貴族層は、(いか)れる民衆の後先(あとさき)を考えない実力行使によって、ことごとく滅び去りました。それは、治安の悪化からおよそ90年後。管理局が発足した直後のことでしたが……その時からこそ、いよいよ本物の『本格的な』内戦が始まったのです」
「え? でも……互いにいがみ合っていた貴族たちが全滅したのなら、あとは民衆同士、みんなで仲良く話し合えば良いってだけのことだったんじゃないの?」

「その『だけ』ができなかったんですよ。……当時、オルセアの社会は中世段階そのもので、まだ近代化への努力など誰も始めていませんでした。それ故、一般の民衆も、それぞれの領主の許で自分たちの地域のことだけを考えて、他の地域の固有の事情など全く知らぬままに生きて来たような無学な人たちばかりだったのです。
 結果として、地域間の対立感情はとても根深く、その一方で、どの地域でも他の地域に対する知識や理解
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