第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第四節 闖入 第二話(通算97話)
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てもらうよ」
「無いものはない。決まりだな」
一撃離脱戦法である。
最大戦速で突入し、ライラ隊を射出、主砲一斉射して安全距離を確保する手筈だ。丁度、追撃する《アレキサンドリア》とは《アーガマ》を挟んで反対側になる。上手くすればフライパスの芽を摘める。
「にしても、敵の船足が遅い……」
「恐らく襲撃部隊を何がなんでも回収したいんだろう」
「お宝でも抱えてるってのかい?」
クイックイッと人差し指でライラを近くに呼ぶと、何事か呟いた。
「なんだって? 盗られた!?」
「声がデカい」
「うるさいね……そりゃ、連中が慌てる筈だ。マヌケにも程があるじゃないか」
呆気にとられた顔で、嘆息にも似たため息混じりで洩らした。なにがエリート集団だと言わんばかりだ。
「それともうひとつ。潜入したのは所属不明機――見たこともない新型だったそうだ」
「どっちも新型の発表会かい? 景気のいい話だねぇ」
チャン・ヤーが肩を竣めた。
連邦軍はティターンズ設立以後、予算をそちらに取られており、《ボスニア》には標準装備のフライトユニットである《シャクルズ》すら回ってこない状況だった。新型と聞いて嫌みのひとつも言いたくなるライラの気持ちはチャン・ヤーにも理解できた。ライラたちが搭乗する《ジム・カスタム》はまだ新型の部類であるが、制式採用からすでに三年が経っている。「特徴がないのが特徴」といわれる総合的な性能向上機だ。これとてようやく配備された機体である。
「落ち着け。ジム・カスタムだっていい機体だろうに」
「カスタムが駄目だなんて、言ってやしないよ。R型より反応速度もいいしね。でもね、ティターンズの専用機――クゥエルがありゃあね」
それは無理というものだった。ティターンズ専用に開発された《ジム・クゥエル》は現在ようやくティターンズ全軍に配備が終了したばかりであり、次期主力機が制式採用されなければ連邦軍には一機たりとも回ってこないだろう。
「無茶言うな。カスタムが貰えているだけありがたいと考えなくちゃな」
チャン・ヤーの言う通りではある。だが、露骨な予算配分の不均衡や人選の不公平は反感を育ててしまうのだ。が、それ故に擦り寄る者が多いのも確かである。
「連中が捕り逃した奴等を捕まえれば、連中の鼻を明かせる」
やれやれ……という顔でチャン・ヤーはライラを見た。これがなければライラはとうに佐官に上がっているだろうに、とさえ想っている。それは恐らく真実だろう。だが、ライラ自身は気にもしていなかった。目の前の戦いが彼女の生き甲斐であり、愉しみなのだ。
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