第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第四節 闖入 第二話(通算97話)
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存外、呆気なく《アーガマ》を捕捉できたチャン・ヤーは罠を疑った。発見が余りにも容易すぎたからだ。普通ならばミノフスキー粒子による電波障碍によってレーダーが使えず、ミノフスキーレーダーによる位置推定が関の山だからだ。つまり、現在敵も味方もミノフスキー粒子を撒布していないということになる。罠を疑うのは当然であった。
さらに、噂に聞くブレックス・フォーラが艦隊指揮を執っているのなら、単艦ということは考えにくいこともあった。反政府軍の陣容は分からないが、随伴艦は少なくとも二隻はいるだろう。戦隊規模ならば僚艦が二〜四隻である。サラブレッド級が旗艦ならば、最低でも僚艦がサラミス級二隻として、二個中隊機動歩兵二四機の戦力だ。直掩を除いても十六機は攻撃小隊として出撃可能だ。
「やはり、《アレキサンドリア》と合流してからの方がよくないか?」
「何怖じ気づいてんのさ、各個撃破のチャンスじゃないか」
物事はそれほど単純ではない、と言いたいところだが、ライラの意見にも一理はある。だが、賭けるには情報が少なすぎた。索敵範囲に僚艦がいないからといって、来援がないとはいい切れない。
チャン・ヤーは腕組みして考え込んだ。
こちらの戦力は六機、単艦ならば彼我比は敵が満載として最大で二対一。ライラ隊なら互角に持ち込めるかも知れない。
「考えたって始まらない。アタシは出撃るからね」
「まぁ、待て。この状況なら、貴様の小隊だけ先行して、というのは危険だ」
チャン・ヤーが副長に合図するとメインスクリーンに相対航宙図が展開する。赤い光点が《アーガマ》、青が《ボスニア》、黄色が《アレキサンドリア》である。まだ戦闘は始まっていないが、《アレキサンドリア》の追撃を嫌ってどこかで《アーガマ》が仕掛けるのは明白だった。
「恐らく、サラブレッド級には二隻の僚艦がある。サラミス級だとは思うが、正規軍だ。ジオンの残党どもとは訳が違う」
今度はライラが考える番だった。如何に強い敵と戦うのが趣味といっても、部下の命を粗末にすることはない。自分だけなら必ず帰ってこられる自負があるが、部下の命は可能な限り失わせたくない。つまり、圧倒的不利な状況になりかねないかどうかだ。
「アンタが予想した敵僚艦の現在位置は?」
「索敵範囲には艦影なし……ということは合流ポイントは地球軌道の手前だろうな。フライパスの前には合流するだろう」
ならば奇襲しかないと、ライラは肚を決めた。勘という根拠のない自信ではあるが、敵の戦力は決して多くない。軍事常識を盾に奇抜さをアピールするような策戦を立てるということ自体がそれを物語っていた。
「アタシとライル、カークスが先行する。直掩はジェイムス。ゲタが無いのが痛いな。場合によっちゃ、ジェイムスたちに後援し
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