暁 〜小説投稿サイト〜
魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第3章】実験艦〈スキドブラドニール〉、出航。
 【第1節】八神はやて提督、ホールでの訓示。
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 そして、新暦95年5月7日の朝10時すぎ。
 カナタとツバサは、アギトの先導で技術部が占有する「特別区画」に入りました。
 二重の隔壁は両方とも、そこを通過するためにはそれぞれ別の複雑な認証コードが必要となっており、新暦の時代に入ってから増築されたこの区画は、〈本局〉の他の区画からは完全に切り離されています。
 三人はそのまま透明なチューブ状の一本道の通路を、エスカレーターで昇って行きました。これならば、もし誰かが不法に侵入したとしても、この通路内で簡単にその侵入者を「排除」することができるでしょう。

 ふと見上げれば、通路の天井には「そのための装置」と(おぼ)しきモノが幾つも取り付けられていました。
 ツバサはそれを見て、思わず感嘆の声を漏らします。
「これは、また何と言うか……厳重な警戒ですね」
「ああ。一時期、〈本局〉内部の情報が随分と外部に漏れていたことがあったんだよ。それ以来、技術部も機密保持に躍起(やっき)になっちまってなあ。
 まあ、最新の研究が営利目的の企業に流れたりすると、大体ろくでもない結果になるから、機密保持それ自体は必要なことなんだけど……。おかげで、こちとら出入りの(たび)に面倒なことだよ」
 アギトはそう言って肩をすくめました。

 カナタはしばらく左右を見回してから、ふと右手のドックを指さしました。
「あ! あっちに何か、変わった形の船が見えるけど、もしかして……」
「ああ。あれが、今からアタシたちが乗る実験艦〈スキドブラドニール〉だ」
 全長は中型の次元航行艦と同じぐらいですが、妙に幅が広く、随分と不格好(ぶかっこう)な艦です。
 よく見ると、艦首も鋭角的ではなく、ほとんど「進行方向に対して垂直な平面」のようになっていました。まるで『もっと大きな艦の、前半分をバッサリと切り落とした』かのような、不自然な外観です。
「見た目はそれなりに大きいんだが、艦内に実験用の装置やら何やらをたくさん積み込んでるからな。実は、居住区画は結構、狭いんだよ。
 それで、お前たちにも、普通の艦なら二人部屋として使われるような広さの部屋を四人で使ってもらうことになる。……相部屋になるが、まあ、相手も二人組の女性陸士だそうだからな。特に、問題は無いだろう?」
「ええ。充分です」
「ボクは大部屋でザコ寝とかも覚悟してましたから、ゼンゼン大丈夫ですヨ!」
「アホか! いくら実験艦でも、次元航行艦でザコ寝は()えよ!」
 カナタのシャレに、アギトも笑って、そうツッコミを入れました。


 こうして、カナタとツバサはアギトとともに、頭の上から靴の底まで念入りな空気洗浄を受けてから、実験艦〈スキドブラドニール〉に乗り込みました。
 しかし、どうやら、搭乗順は最後になってしまったようです。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ