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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)
【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第3章】実験艦〈スキドブラドニール〉、出航。
 【第1節】八神はやて提督、ホールでの訓示。
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らなあ。こちらで運んでも、かえって目ぇつけられとったやろうし……わざわざ出航の予定を土壇場で何時間も繰り上げて()かした甲斐(かい)があったわ」
「リークした情報に、しっかり(くら)いついて来てくれて良かったです」
 つまり、『今回の予定変更は、ベルカまで〈スキドブラドニール〉を「ごく自然に」監視できる状況にある船が、その輸送船ただ一隻であることを見越した上での、計画的なものだった』という訳です。

「そうやな。この(ぶん)なら、きっともう一方の『虚偽(ウソ)情報』もそのまま()呑みにしてくれとるやろ」
「ですが、(あるじ)はやて。本当に『あれだけのモノ』が必要な状況になど、なるのですか?」
 ザフィーラが少し心配そうな口調で問うと、さしものはやてもやや深刻な表情を浮かべました。
「そうならずに済んでくれれば、それに越したことは無いんやけどなあ。……まあ、あのコンテナ三つは、あくまでも保険や。あれだけのモノがあれば、たとえホンマにマズい状況になったとしても、コロナとミウラたちが、少なくとも多少の時間かせぎぐらいはしてくれるやろ」
 もちろん、輸送船の船長や乗組員たちは、自分たちがそんなヤバいモノを運ばされているとは、全く気づいてなどいなかったのでした。

「ところで、シャマル。今しがたの『貨物関連に限って言えば』という言い方は、私、ちょぉ気になったんやけど?」
「はい。実は、あの輸送船には何名か乗客もいるんですが、出航ギリギリに『飛び込み』で一人、乗客が増えたそうです」
「乗客って……発掘調査関連の人か?」
「はい。どうやら、第五地区のフランツ・バールシュタイン博士の客人らしいんですが、それ以上のことはよく解らなかったそうで、エルスちゃんも、しきりに(あやま)っていました」
「う〜ん。まあ、それは、ええよ。フランツさんの客人なら、私らにとっても、特に不都合は無いやろ」
「そのフランツ博士というのは、どういう人なんですか?」
「そうやな。六十代の考古学者さんで、実は、ヴィクターの母方の伯父(おじ)さんで……まあ、気さくでダンディなオジサマやで」
 はやては笑って、リインにそう答えましたが、さすがに「フランツ博士の客人」の正体までは想像がつかなかったようです。



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