第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第四節 闖入 第一話(通算96話)
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りにライラを一睨みしてから、口を開く。
「どうやら、グリプスに潜入したらしい」
「ヒュー!」
ほらきたとばかりに、チャンが眉をひそめる。ライラの口笛が勘に障ったのだ。こういう時のライラは軍人とは言い難い。趣味でMSパイロットをやっていると公言して憚らないのだから、誰も何も言うものではなかった。
ライラは職業軍人であるが、主義主張とは無縁だ。それこそ連邦の正義なぞこれっぽっちも信じていないが、ジオンの主張も眉唾物だとしか感じない。世の中はなるようにしかならないと思っている。ティターンズはいけ好かないスカした連中だが、反地球政府運動も胡散臭いと感じていた。
だからかもしれないが、〈グリプス〉への潜入を果たしたという連中に賛辞でも贈りたい気分だった。ただし、自分の獲物としてであるが。
「やるか?」
「今回は出撃るよ。第一小隊だけで狩ってやるさ」
やれやれ――そんな声を出したかのような表情でチャン・ヤーが通常航路からサイド1に進路をとるように指示する。理由は簡単だった。
「追撃を避けるなら、フライパスだろ」
ライラの言葉にクルーの誰もが納得する。〈ルナツー〉からの増援を避けるには天底方面か、サイド1へのショートカットしかない。宇宙の航路はそれほど多くは存在しないのだ。永遠に補給を受けなくてもよい永久機関を積んでいたとしても、人間が保たないからだ。
「復唱」
「進路サイド1方面、地球周回軌道。目標、反政府艦サラブレッド級」
副長が声を上げる。艦橋クルーがそれぞれに復唱し、各部署に指示を送った。
「総員、第二種戦闘配備。対宙監視を巌となせ!」
忙しく動き出した艦橋に用はないとばかりにライラは直通エレベーターへ向かう。去り際にチャン・ヤーに声を掛けた。
「艦長、パイロットは今の内に休ませとくよ。捕捉したら、スクランブルだ」
「許可する」
軍艦の艦長は搭載するMS隊の指揮権を持つとはいえ、多少の遠慮がある。MSの登場以来、艦艇はMSの掩護なしには戦闘できないからだ。そのことが、パイロットたちの口の利き方にも現れている。
ライラはニヤリと笑って、追認したチャン・ヤーを見た。チャン・ヤーはそんなライラを見ようともせず、漆黒のスクリーンと航宙図を睨んでいた。
「心配しなさんな、敵はアタシの獲物だよ」
チャン・ヤーはライラには答えず虚空を見据えていた。
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