暁 〜小説投稿サイト〜
機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第四節 闖入 第一話(通算96話)
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
「グリプスからの援軍要請だと?」

 チャン・ヤーは艦橋の艦長席にどっかりと腰を落ち着けて、剣呑な眼をオペレーター席から見上げる通信長に向けた。

「はっ、ダグラス中将の正式な指令書もあります」
「きな臭いねぇ……」

 ふわりと浮いた、個性的というより顔立ちは整っているが、男を圧倒する戦闘的な強さを滲ませた女がそこにいた。相対するものにその肢体を想像させる肉感的なプロポーションをしている。

 女の名はライラ・ミラ・ライラ。〈ルナツー〉きっての女傑で、指折りのエースパイロットであるが、敵を選り好みすることで有名だった。弱い敵と見れば、部下に任せてしまい出撃しないなどの行為があるため、彼女の部隊は〈ルナツー〉の正規軍にあって不正規扱いされていた。その割に脱落者が少ないのは、ライラの人徳かもしれない。

「嬉しそうだな?」
「戦争好きみたいに言うんじゃないさ」

 ライラが気色ばむ。
 眉間をひそませた表情に色気がある。妖婉さというか、戦う男を奮い起たせるようなものがあった。威圧感がありながら、包容力を感じさせる母性に似たものを、その内側に感じさせるからであろうか。

「好きな癖に」
「アタシはね、戦うのが好きなだけさ。戦争なんてバカげてるからこそ、遊びで戦ってるんじゃないか」

 力みのなさに本音が垣間見える。ライラは何度言わせるのかという表情でチャン・ヤーを見やった。チャン・ヤーはチャン・ヤーでまたかという表情だ。二人の間に無言の会話が続く。口に出さずとも伝わるのは付き合いが長いからだろうか。一年戦争の頃から船乗りとパイロットと部署は違うが、同じ艦に乗り合わせて実に八年近い。

 ライラのパイロットスーツは、艶やかな紫である。連邦では原則としてパーソナルカラーは認められておらず、これは部隊カラーだった。ライラの率いる部隊は紫と赤紫に塗り分けられた《ジム・カスタム》に搭乗している。部隊章は《薔薇と交叉した剣》だ。元々はライラのパーソナルエンブレムであったが、いつの間にか部隊章になっていた。

 ライラの物腰から宇宙空間に馴れ親しんでいるのが判る。恐らく生粋のスペースノイドなのだろう。軽い足の動きだけで体をコントロールするのは、アースノイドにはできない芸当だ。

「で?」
「あん?」

 ライラが艦長席の横に降り立った。チャン・ヤーはとぼけてみせる。ライラの質問は解っていたが、敵についての詳しいことが解っていなかったことと、得られた情報には箝口令が敷かれていた。が、そんなことを意に介すライラではない。

「どんな相手なのさ?」

 獲物を見極める豹の眼に、愉しそうな表情を覗かせる。遊べる相手なんだろう?とでも言いたげな顔でだった。ツルリと顔を撫でて、ライラ相手では仕方ないと諦めた。他言無用とばか
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ