第百二十三話 足が速いとその九
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「私もね」
「知ってるよな」
「ええ、だって蚊とかを食べてくれるから」
「むしろ有り難いよな」
「そうした生きものよね」
「そうだよ、じゃあな」
鳴海はかな恵にあらためて言った。
「帰ろうな」
「お家にね」
「家まで送るな」
「いつも通りね」
「ああ、そうするな」
かな恵に微笑んで応えてだった。
かな恵は実際に鳴海に彼女の家の前まで送ってもらった、そうしてそこで彼とまた明日を手を振り合って別れてだった。
家に入った、すると母と弟はもう家にいてだった。
「晩ご飯お好み焼きなのね」
「あんた好きでしょ」
母はかな恵に微笑んで言ってきた。
「明男も好きだし今日商店街で豚肉とキャベツ安かったから」
「お好み焼きにしたのね」
「ええ、あと冷蔵庫のシーフードミックスそろそろ賞味期限だったし」
このこともあってというのだ。
「そっちもね」
「使ったのね」
「あるものは使って」
「賞味期限までに」
「そうしないと駄目でしょ」
「捨てたら勿体ないしね」
「だからよ」
それでとだ、母は答えた。
「シーフードミックスも使ったわ」
「それは豪華ね」
「豚肉に」
まずはこれにというのだ。
「海老に烏賊に貝も入った」
「豪勢ね」
「だからどんどん食べなさい」
「ああ、食うよ」
明男も自分の席から言ってきた。
「二枚食っていいよな」
「いいわよ」
母の返事は明朗なものだった。
「遠慮したら駄目よ」
「それじゃあな」
「お父さんの分もあるから」
まだ帰宅していない父の話もした。
「あんた達好きなだけ食べなさい」
「そんなにあるのね」
かな恵は自分の部屋に向かい着替える前に母に尋ねた。
「そうなのね」
「だからキャベツ安かったのよ」
「それで小麦粉もあって」
「買い置きがあったからね」
「それ使ったのね」
「じゃあ早く着替えてきなさい」
まだ制服姿の娘に告げた。
「いいわね」
「そうするわね」
かな恵もそれならとなってだった。
自分の部屋に入って制服を脱いで長袖の服とジーンズの部屋着になった、そのうえでリビングに戻ってだった。
親子三人で夕食となった、だがここで。
明男はかな恵を見てだ、こう言った。
「姉ちゃん今日は飲まないのかよ」
「そういうあんたもじゃない」
「俺最近寝る前に飲んでるんだよ」
「そうなの」
「受験勉強してるからさ」
「中三だしね、あんた」
「だからな」
この事情があってというのだ。
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