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星河の覇皇
第八十六部第二章 教育改革その十三

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「それはおかしい」
「おかしいことはおかしいですね」
「平気で人を殺し欲にまみれたカルト教団の教祖が偉大か」
「間違っても違いますね」
「しかしそう言う知識人もいる」
「愚かなことに」
「そう、知識人が愚かであることもだ」 
 この場合もとだ、上司は言った。
「有り得るしだ」
「実際にありますね」
「ジャン=ボダンは経済等を理解していたが」
「あの魔女狩りの」
「そうだ、偉大な学者であったが」
 当時のフランスで最大の知性とさえ言われていた、経済等については極めて時代の先を見た先進的な人物であった。
 だがそれでもだ、魔女狩りについてはだったのだ。
「論理も科学性もなくな」
「その両方を兼ね備えていた人物が」
「それがだ」
 まさにというのだ。
「魔女狩りで暴論を言ってだ」
「それを積極的に支持して」
「多くの犠牲者を生み出す元凶になった」
「それが今も批判されていますね」
「魔女があの様に簡単にわかるものか」
 上司は吐き捨てる様にして言った。
「特に自然現象まで操る様な」
「そうしたですね」
「力の持ち主が簡単に見付かるか」
「そんな筈がないですね」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「そんなこともわからずだ」
「魔女狩りを積極的に支持するなぞ」
「有り得ない、ジャン=ボダンは愚かだった」
「少なくとも魔女のことでは」
「そして偉大な思想家と言われてもな」 
 俗にこう呼ばれていてもだ。
「権力欲、食欲、性欲、金銭欲しか頭になくだ」
「下らない俗物ですね」
「その俗物が教祖だった宗教があってだ」
「その教義をですか」
「賛美した事例もある」
「愚かな話ですね」
「知識人も人間だ、人間は賢明だが愚劣でもある」
 その両方を兼ね備えているというのだ。
「何処までも賢明になれるが」
「それと共にですね」
「何処までも愚劣になれる」
「それが人間ですね」
「だからだ」 
 それでというのだ。
「知識人がいつも賢明な主張をしてだ」
「的確とはですね」
「限らない」
「だからその主張を鵜呑みにしないことですね」
「孟子も言っていた、書に書いていることを鵜呑みにするのなら」
 中国戦国時代の思想家だ、性善説を唱えたことで知られている。その主張は感嘆に言うと人に信頼される人間や国家になれということか。
「それならだ」
「もうですね」
「読まない方がいい」
「知識人の発言もですね」
「鵜呑みにするならな」
 それならというのだ。
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