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養子は宝
第一章

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                養子は宝
 古い寺である、だが。
「結局この歳までな」
「子供は出来なかったわね」
 住職の津田祐月と妻の礼香が寺の自分達の部屋で話していた、二人共もう五十を過ぎて顔に皺が目立っている。
「そうね、だから」
「養子にな」
「来てもらって」  
 そうしてというのだ。
「それでな」
「継いでもらうのね」
「そうしてもらうしかない」
「お寺のことを考えたら」
「同じ宗派でな」
 夫は妻に話した、僧侶だが今は家の中にいるので二人共私服である。
「それでな」
「若い人にね」
「資格がなくてもな」
 寺を継ぐ即ち僧侶のというのだ。
「これから取ってもらったらいい」
「それでね」
「兎に角跡を継いでもらわないとな」
「私達に子供がいないから」
「まずい、それでだ」
「これからね」
「誰かにな」
「来てもらうわね」
「そうしよう」
 こう夫婦で話してだった。
 早速同じ宗派の縁故でだ、寺に養子に入ってくれそうな人を探した。すると同門の寺の次男さんで大学を卒業する予定の中原久信という青年がだった。
「僧侶の資格も取ったしな」
「同じ宗派だし」
「養子に入ってもいいと言っている」
「お寺継いでもね」
「だったらな」
「この人とお話しましょう」
 夫婦で話して実際にだった。
 その中原という青年と会ったが丸々と太って黒髪を左で分けている丸眼鏡の青年だった。背は一八〇位だ。
 その彼が二人と会って実際に養子に入って欲しいと言われた時に言った。
「確かに僕は養子に入ることもです」
「構わないね」
「そう言ってるわね」
「そう言ってますが」
 それでもと言うのだった、
「あの、僕こんな外見で運動神経もない所謂ヲタクですが」
「アニメや漫画が好きなのか」
「それにゲームかしら」
「そうしたのが大好きで」
 その通りだというのだ。
「もてないですし」
「いや、そういうことは関係ないよ」
「問題は信仰心があって真面目で」
 初老の夫婦は中原に話した。
「入ってくれるかどうかよ、うちのお寺に」
「そして頑張ってくれるかだよ」
「だからね」
「外見とかのことはいいよ」
「うちのお寺を継ぎたいならね」
「それでは」 
 中原は夫婦の言葉に頷いた、そうしてだった。
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