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冥王来訪 補遺集
第二部 1978年
原作キャラクター編
何れ菖蒲か杜若 アイリスディーナとベアトリクス 美人義姉妹の道
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したが、まあ面倒(めんどう)でしたわ。
よからぬ問題を()こさないために兵舎(へいしゃ)を分けるしかない。
別棟(べつむね)(かわや)や浴場を作るしかない。
何より、男女混成で運用する場合は信頼できる政治将校か、指揮官を四六時中(しろくじちゅう)置くしかない」
国防相は彼を冷ややかな視線で見つめながら、
「でも婚前妊娠の騒ぎが起きたと……」
シュトラハヴィッツは、頭を下げ、平謝りに()びいる。
「兄貴。ヴィークマンの件は俺の管理不足です。
ですが2万の兵の管理をしながら、BETAと戦争をして、その上、婦女子のお(もり)りまでは……」

「戦争がひと段落ついたことという形で、婦人兵の新規徴募(ちょうぼ)は減らす。
優秀な人物は、目の届くところで預かる。これでどうだね」
シュトラハヴィッツは、ホッとした様に相好(そうごう)を崩す。
「いや、兄貴。助かります」
ハイム将軍も同調する。
「私もじゃじゃ馬ならしは、荷が勝ちすぎると思っておりました」
「では、女子の主席卒業は大臣官房付け。
女子の次席卒業は、参謀本部直轄の戦術機部隊で、面倒を見る形に……」
議長は、即座にその説を取り上げた。
「よし、その線で行こう」

 東ドイツの国家人民軍も、また、西ドイツの連邦軍同様、婦人志願兵と女性将校の割合は少なかった。
史実を紐解けば、1989年の国家人民軍解体の時点で、女性の将官はいなかった。
最高階級が軍医大佐で、軍病院の責任者の一人にしか過ぎなかった。
また三軍と国境警備隊を合わせて、婦人将校は200人に満たなかった。
 人民警察とシュタージにも婦人警官や女性職員はいたが、圧倒的に少なかった。
20万人近い非公式協力者の中で、婦人の割合は少なかった。
 では、どの程度であるか。
一説では、東独で男性83パーセント、西独72パーセントである。
単純に引いた割合から計算すれば、東独国内の女性の非公式工作員は17パーセント、西独では28パーセントである。

 それゆえ、アイリスディーナやベアトリクスが、どんなに上に昇ることを望んでいても、東独の社会システム上、難しかったのである。
 また、国家人民軍は1956年の建軍以来、第三帝国(ダスライヒ)国防軍(ヴェアマハト)の文化が入ってきていた。
プロイセン軍の伝統色濃く残る軍隊社会において、婦人兵の扱いは困難を極めた。
 大祖国戦争(だいそこくせんそう)で婦人兵を大動員したソ連の(ひそみ)(なら)い、婦女子の部隊、俗にいう娘子軍(ろうしぐん)を組織する。
そのような男女の性差を無視した構想も、夢のまた夢であった。


 未開社会から近代社会に入ったソ連や北欧と違い、ドイツは、中世という文化的な豊かさを
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