第二部 1978年
原作キャラクター編
何れ菖蒲か杜若 アイリスディーナとベアトリクス 美人義姉妹の道
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を免れなかった。
1970年代初めにピルの販売許可や、限定的ではあるが堕胎の許可、西ドイツより1年早く同性愛の非刑法化を実施した。
ゆえに、1960年代に青少年であったユルゲンたちと、その親の世代であるシュトラハヴィッツ将軍の間には価値観の隔たりができていたのだ。
憤懣やるかたない顔をするシュトラハヴィッツ将軍は、興奮した調子でなおも続ける。
「それも、まだ卒業も部隊配属も決まる前ですよ。
こればかりは……もう少し如何にか出来なかったものですかと……」
「うむ。そうであろう。
大体、屈強な男どもが若い女と一緒にさせて置いたら、何が起こるか分からん。
君は、その経験者だからわかるだろう」
議長の顔色は良かった。
諸臣はみな彼の考えをうすうす感じ取っていたので、一斉に、
「わが国には婦人兵の戦闘部門への配置など早すぎた」とか、
「そんなの軍事作戦に支障があると断りましょうよ」と、衆口こぞって言った。
しかし、アーベル・ブレーメは反対して、
「同志シュトラハヴィッツ。実は私も辞めさせたいのは山々だが……」
立ち上がったシュトラハヴィッツ将軍は、見下すようにして彼をのぞく。
「なぜですか。理由をお聞かせください」
アーベルの心は揺れた。
彼は、経済企画委員会に名を連ねた官吏であり、通産省の事務次官である。
古参党員の父を持つ血統と深い見識を持つ人物として、歴代議長の信任が厚かった。
議長の執務室を訪ねて、彼の意見を否定し、自説を展開するのは今に始まった話でない。
ただ、数日間かけて内容を詰めた政治局員たちの提案を一笑に付すという罪悪感と不安。
その一方で、国益を無視しても、自分の愛娘ベアトリクスを陸軍の将校にしてやりたいという欲望が突き上げてくる。
結局は、彼にしては珍しく、『もうどうとでもなれ』という気持ちで口を開いた。
『こうでもせねば、もうベアトリクスの望みを、私の一存でかなえてやる機会はあるまい』
肘掛椅子に座ったまま、アベールの体は汗にまみれていた。
「婦人兵は確かに足手まといになる。
戦場では常に辱めの危険が付きまとうのは事実。
男女の過ちの可能性が高いのもまたしかり。
だが、彼女たちが退役した後、国家安全保障の必要性を理解し、また、国家人民軍の次世代を育成する「健全な」母になる。
私は、そう考えているのだよ」
シュトラハヴィッツ将軍は、思わず失笑を漏らす。
「俺はウクライナで女衛士を交えた部隊運営をしてま
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