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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
八十二話 新たなる戦いの序曲
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よ」
「成程な。だが彼等が帝国に残ると決意した時はどうするのだ」
「その意思決定は尊重するしかないでしょう、民意ですから。ですが民意というものは流動的ですからね。それに、彼等にはほぼ軍事力と呼べる物が無いのですから、たとえ帝国に残ったとしても短期的には我々に影響はありません」
「確かにそうだな。だが短期的と言ったな?」
「はい。理想的に事態が進行して、我々が帝国中枢を降したとします。その場合、帝国に残る事を選択した辺境の彼等がそのまま帝国である事を選択するとは思えません。最低でも中立化を望むでしょう。となると長期的に見た場合、同盟や帝国残党とは異なる経済圏が生まれる訳ですが、同盟参加を望まなかった彼等が同盟に好意的であるとは限りません。そうなると軍事的には補給の面で不都合が生じるでしょう。占領せずに彼等の民意に任せた場合、そうなる可能性も考えねばなりません。ですから彼等の民意がどうであれ交渉は必要になるでしょうね。同盟参加を望むのなら地位を決定せねばなりませんし、中立や帝国残留を望むのなら和親条約や不可侵条約の締結をせねばならないでしょう」
「条約の締結か…軍の仕事ではないなそれは」
「ですが、軍じゃなくても誰も考えた事はないと思いますよ。それに一番先に帝国辺境と接するのは我々軍なんですから、作戦方針の中に外交的な余地を入れて提示してあげないと、どこの委員会も考えてはくれないと思います」
「ふむ…話を聞いていると、私などより君が政治家になった方がいいと思うがね」
「ハハ…私では若僧過ぎて重みがありませんよ。だからこそトリューニヒト委員長も閣下を選ばれたのだと思います」
「だがな、私が政治家になったとして何が出来る、という思いはある。精々軍の統制がいい所だろう」
「まさしくそれを求められているのだと思います。当然ながらトリューニヒト氏は安全で確実な政権運営を求めるでしょうから。自分の主な支持基盤である軍にぐらついて貰っては困るでしょうし。それに軍は得点を稼ぎ過ぎました。対帝国戦の結果が国内政治に直結しているとはいえ、現在の社会情勢を作り出したのは軍、国防委員会です。他の委員会と協調路線を取っているとしても、それに対する妬みや嫉みは存在します。今後、軍がどれだけ成功を収めたとしてもでかい顔をさせない配慮が必要になります。シビリアン出身の国防委員達ではそれは難しいでしょう。正確に軍の内情を知る方が必要なのです」
「…軍からは嫌われそうだな、私は」
「そんな事はないと思います。大丈夫ですよ」

 窓のないこの部屋で、親父は遠い目をした。見ているのは先の見えない未来か、それとも政治などという面倒な事を考えなくてもよかった昔の事だろうか。
「話を戻そう。帝国軍が出兵するとして、その目的はアムリッツアやイゼルローン要塞の奪還を目的とした物だろ
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