すれ違う兄妹
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達の歌は聞いていると元気になる。
そんな歌だった。
「お父さん、顔が良く見えないよ。」
子供である美奈では、大人達の壁はあまりにも高すぎる。
「どれ、父さんが肩車してやろう。」
「わーい♪」
肩車されて、喜びながら歌っている彼女達に視線を送る。
「愛紗、歌は聞こえても顔が見えないのだ。」
鈴々は三人の中でも一番身長が低い。
何とかしてジャンプして、チラホラ見えるのだがはっきり見えない。
ふと、視線を横に向けると、大男に子供が肩車しているのが見えた。
「鈴々もあれをして欲しいのだ!」
二人は鈴々の指差した方向を見る。
顔は似てないがおそらく親子であろう。
父親が娘を肩車して、旅芸人の姿を見せている。
あれほどの身長なら、肩車されたらよく見える。
何せ、他の大人達より頭が一つ飛び出ているのだから。
「駄目だ。
私は買った物を持っているから、肩車ができる訳がないだろう。」
「じゃあ、お姉ちゃん!」
「わ、私は鈴々ちゃんを肩車できる力が無いよ。」
「むうう!
鈴々もあのおじさんに頼んでくるのだ。」
「それは駄目だ。
家族の仲を引き裂いてどうする。」
そう言われると鈴々は渋々と諦める。
「聞いていると良い歌声ですね。」
「うん、何か元気が出るよね。」
「顔は見れないけど、歌は凄く良いのだ。」
話をしながら聞いていると、歌が終わり拍手が起こる。
愛紗も荷物で手を塞がれていなかったら、周りと同じく拍手をしていただろう。
現に桃香と鈴々は拍手している。
「これで『数え役萬☆姉妹』の芸は終了です。
ご清聴ありがとうございました。」
眼鏡をかけた少女が一礼すると、それに続いて二人も頭を下げる。
聞いていた人は大なり小なり、お金を払っている。
「愛紗。」
鈴々が何を言いたいのか分かったのか、器用に財布を取り出し、少ないがお金を渡す。
「ほら、行って来い。」
それを受け取ると太陽のような笑顔を浮かべて、人混みの中を掻き分けていく。
「いいの?」
「あの歌声は素晴らしいものを感じましたから。
あれほどの額なら問題ありませんよ。」
「これで『数え役萬☆姉妹』の芸は終了です。
ご清聴ありがとうございました。」
眼鏡をかけた少女が一礼すると、それに続いて二人も頭を下げる。
聞いていた人は大なり小なり、お金を払っている。
「素晴らしいな。
あんな歌声をこの時代で聞けるなんてな。」
「縁殿、何か言いましたか?」
「いや、それより荷物を持ってくれないか?
彼女達に少しでもお金を渡したいと思う。」
「お安いご用です。」
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