第20話
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前に現れた。それが――――――」
「”アルマータ”、ですか……」
「聞いていると思うけど、これまでカルバード両州の裏社会は黒月が一強だった。共和国滅亡後は”ラギール商会”も勢力を広げてはいるみたいだけど、彼らの場合は黒月と違い、商人としての立場の方を重視していて、自分達の商売の邪魔さえしなければ暗闘を積極的に行うということもしないわ。そんな仲、アルマータも中規模程度の白人系マフィアの一つに過ぎなかったの。分岐点となったのは8年前――――――ボスだったエンリケという男が裏社会で下手を打ったことよ。……そのあたりの事情は、貴方のお友達の方が詳しそうだけど。」
「らしいな。俺も又聞きしたくらいだが。」
アニエスの言葉に頷いた後説明をしたエレインに視線を向けられたヴァンは頷いて答えた。
「そしてそのエンリケを粛正する形で組織を掌握したのが、当時の若頭……ジェラール・ダンテス――――――現アルマータのボスよ。」
「……………」
「……その人が……」
「……名前だけは聞いてるがそこまでヤバいヤツなのか?」
エレインが口にしたアルマータのボスの名を知ったアニエスとフェリが真剣な表情を浮かべている中、ヴァンはエレインに訊ねた。
「たった数年で組織の規模を何十倍にも拡大させた手腕……最高ランクの”裏”の使い手たちを部下として従わせているカリスマ性。そして本人の圧倒的な実力と何よりもあの異常な精神性……」
「……?まるで実際に会ったことがあるような口ぶりだな。」
ヴァンの問いかけにエレインは静かに頷いて話を続けた。
「一度だけ――――――本人は名乗っていない上に姿は光学迷彩でよく見えなかったけれど。ジェラール本人と思わしき人物と遭遇してやり合ったことがあるわ。……あの時、彼を捕らえられていればどんなに良かったことか……でも実際には……何もできなかった。今思い返しても背筋が凍る程底の知れない男よ―――――あいつは。」
「お前にそこまで言わせる相手か……」
「ええ……そしてギルドや警察はここ数年アルマータを探り続けている。多分GIDも――――――恐らく黒月に、他の裏の勢力なども。でも内偵は悉く失敗し……犠牲になった遊撃士や捜査官も一人や二人じゃないわ。」
「あ……」
「……そこまで、ですか。」
「……………」
エレインの説明を聞いたアニエスは不安そうな表情を浮かべ、フェリは表情を引き締め、ヴァンは真剣な表情で黙り込んでいた。
「―――――”A"の幹部だけど、貴方達が遭遇した”メルキオル”以外にも何人か確認されている。恐らく一部は煌都入りしてるでしょう。ヴァンはともかく、フェリさんもまあ百歩譲るとして―――――アニエスさん。一般人の貴女はどう考え
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