第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第三節 決断 第五話(通算95話)
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禦陣の裏手からであった。
敵の新手である。
こんなに早く増援が到着するとは、誰も予想だにしていなかった。戦馴れしている連中に違いない。サイド7からの追撃ではないはずだ。考えられるのは〈ルナツー〉しかない。
「ちっ!」
慌てて無線封鎖を解いて指示をだそうとする。だが、まだ敵味方識別信号の受信範囲外である。光学センサーが捉えた映像だけがたよりだが、味方とは思えなかった。
「ランバン!後ろに敵!」
無線が通じないと解っていても口に出してしまう。やはり、信号弾を出すしかない。今はエマもカミーユも戦闘ができるような状態ではないのだ。
赤、赤、赤。
作戦失敗の合図である。
――中尉?
ランバンから通信が入る。怪訝な声で、説明を求めていた。もどかしさを覚えながら、機体を振り返らせる。やはり、ランバンたちは気づいていなかった。ミノフスキー粒子が引き起こす電波障害が艦との通信を途絶させているため、《アーガマ》からの情報も途絶しているのだ。
「後方に所属不明機!掩護に向かうから、頼むわよっ」
――りょ、了解!
ランバンが気がつかなかったのも無理はない。《ジムU》と《リックディアス》では索敵能力が違いすぎるのだ。運用機体の不統一はこういう場面で個々のパイロットに判断の差が生じてしまう。
(この時点で追い付くには〈ルナツー〉以外は考えられない……ということは、ダグラス大将はアチラ側についたってことね)
サイド7と〈ルナツー〉が最も離れた時を狙っての行動であったが、哨戒任務にあたっていたものを増援に寄越したのだろう。となると厄介だ。新兵同然のランバンらと人質を抱えたカミーユたちの勝てる相手ではない。しかも、光点の動きはトリッキーで素早かった。
「この動き……特務仕様? いや《カスタム》だわっ」
光点は三つに増え、明らかに《ジムU》よりも機動力が高い。〈ルナツー〉のRGM‐79N《ジム・カスタム》に間違いない。敵味方識別信号が入るまで待つ余裕はない。いくら近代化改修を受けていても、《ジムU》は所詮、旧型機ベースである。現在、アナハイム社が総力を挙げて新型を開発中と聞かされてはいたが、今ここにないものは当てにしようもなかった。
「まずいわ……」
バインダーのスラスターも全開にすれば追い付けない距離ではない。だが、迎撃される危険もある。
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