第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第三節 決断 第三話(通算93話)
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カミーユは機体を前進させて、ビームサーベルを使い、自分が開けた穴を拡げに掛かかった。流出は既に止まっており、様々なものが宙に漂っている。それを見てエマも穴を拡げるのを手伝い始めた。
瞬く間にMS一機が辛うじて通れる穴になったところで、カミーユから先に外に出た。《ガンダム》の手にはビームライフルが握られている。
二機が外に出ると、対宙砲火が上がり始めた。
降り掛かる火の粉を振り払うかのように《ガンダム》が虚空に舞い上がった。テールノズルの噴射光が尾を曳いて、残像を結ぶ。
刹那、カミーユの《03》から信号弾が放たれた。
青、青、黄。
三つの信号弾が残照を目に残して消える。そして、漆黒の闇の帳が降りた。カミーユはエマ機に追従する形で航路をトレースする。エマは現時刻と《アーガマ》の予定位置から方角を算出していた。
基本的に宇宙では絶対座標が使えない。
というのは、相対物が自転している限り、相対することで、0運動状態を作り出さなければならないからだ。しかし、相対物が近くにない場合、相対座標は意味をなさないために、ラグランジュ・ポイントを起点とする座標を使うことが多い。
「カ、カミーユ……」
座席の後ろからか細い声が聞こえた。フランクリンである。今のいままで、カミーユは存在を忘れていた。実のところ、フランクリンはカミーユがビームライフルを放った後の光景に動転して気絶していたのだ。
「何だい?」
自分の疎ましさを隠さずに棘のある口調でいい放つ。事実、エマもカミーユも民間人でないとはいえ、非戦闘員を連れていることで思いきった機動ができない。だからと言って随意にすれば、気絶どころの騒ぎではない。下手をすれば、半身不随になる。パイロットに掛かるGとはそれほど過酷なものなのだ。「振りきれたのか?」
「……スペアシートを出して、フックで体を固定した上で、シートベルトして」
そんな訳ないだろっ、と怒鳴りたくなる気持ちを抑えて、マニュアル通りの指示をする。リニアシートは機体の向きに応じてGを減殺し、メインカメラの向きに応じて回転するため、衝撃緩衝装置が付いているが、スペアシートには備わっていない。シートベルトと固定フックが命綱である。
「あ、ああ……」
フランクリンは不服そうにしながらも、息子の指示に従った。
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