第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第三節 決断 第二話(通算92話)
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委ねる以外途はない。
MSデッキに出るとエマが声を張った。
「整備はどうかっ」
らしい物言いである。
案の定、エマの機体は予想通りの位置にあった。機付長が機体の足許に見える。《おやっさん》と呼ばれる禿頭の親爺だ。エマの細かい指示にも応えてくれており、長い付き合いではないが、信の置ける人物だ。
エマの《ガンダム》に取り付いていた整備兵が敬礼し、コクピット周りを空ける。エマは振り向きもせずヒルダの手を引いた。一斉に視線が二人に集中する。
一号機ハンガーの方に二人が流れるのを見ながらカミーユもフランクリンの手を引いて体を流した。
(やったっ!)
心の中で柏手を打つ。
幸いハンガーは空いていた。真横ではないものの、一つ向こうに《ガンダム》が並んでいる。確認ざま、フランクリンの手を引き寄せ、コクピットの方に押した。続いて、カミーユもコクピットへと向かう。
つと、エマを見やると、ヒルダがコクピットに入るところだった。続いてエマがハッチに手を添えて入っていく。警備兵が訝しげに顔を見合わせていた。
一瞬の静寂。
コクピットハッチに取りついたカミーユはフランクリンを蹴るようにしてシート裏に押し込み、自分は器用にシートに収まった。
――カミーユ!
作戦開始の合図だ。
絶妙のタイミングだった。
カミーユは落ち着いてイグニッションキーを押し、パーソナルコードを呼び出す。アストナージがあらかじめ仕込んでおいたショートカットシークエンスだ。グリーンランプが次々と点灯し、全周天モニターが周囲の風景を映し出す。
先に、エマの乗る《ガンダム》が動き出した。慌てて、整備兵たちが蜘蛛の子を散らすように離れいく。エントリーレーンを強制排除したエマは、《ガンダム》にビームライフルを掴ませた。
――ハッチ開けろ!
エマの声が拡声器を通じて聞こえる。
ノーマルスーツを着た整備兵が物陰から顔を出していた。わらわらと警備兵が出てくるが、発砲はしない。MS相手に警備兵では歯が立たない。
瞬間、一条の光がハッチを貫いた。鈍い爆発音する。そして突風が一瞬膨れ上がった爆煙を艦外へと吐き出した。
――うわぁああああっ。
オープン回線が絶叫で満たされる。空気の急激な流出で吸い出されそうになったクルーたちが悲鳴を合唱していた。
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