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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第三節 決断 第二話(通算92話)
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 ヒルダの説得とノーマルスーツへの着替えに多少手間取ったものの、艦内の移動は咎められることもなく、あと少しというところまできていた。

 それには四人という人数が幸いしたと言える。連邦宇宙軍の機動小隊編成が四〜五人のパイロットである上に、エマは小隊長だったからだ。小隊規模の人数でノーマルスーツを着て移動していても、普通なら物々しすぎて警戒されるか詮索されるだろうが、エマが一緒であれば出撃ぐらいにしか思われなかったのだ。その上、ノーマルスーツ着用ならMSデッキに出ても違和感はない。エマが顔を晒したもう一つの理由が効を奏した。

 ここまで順調に来ているが、全く問題がない訳ではない。《ガンダム》に取り付く手順を確認するための情報も足りなければ、情報を得る時間もなかった。最悪、段取りが狂う可能性もある。機体の格納位置が焦点だった。

 通常、着艦したMSをデッキに置きっぱなしにはしない。MSは、速やかにハンガーへ移され、整備を受ける。その際の移動はパイロットではなく、機付長が行っている。つまり、パイロットはメンテナンスに首を突っ込まない。

 機付長は基本的にベテランがなり、MSの操縦技術を身に付けている。MS整備にパイロット候補生くずれや戦傷を受けて戦闘に耐えられなくなった者、肉体的なピークを過ぎてパイロットを引退し転科した者が就くケースが多いのは、そのためだ。

 巡航艦にしては《アレキサンドリア》内のMSハンガーは比較的広いが、宙母のように各機の専用ハンガーという訳ではない。整備作業の状況次第で何処に格納されるかは変わってしまうのが普通だ。整備班ごとに持ち場と担当機体が決まっているので、大概は同じ場所を使うだけのことだ。

 残念ながら、エマもカミーユもMSをデッキに乗り捨て、格納されるのを見届けていない。エマは自機の機付長の担当ハンガーを把握しているが、ジェリドの機付長のことまでは覚えていなかった。

 迂闊といえば迂闊だが、カミーユはほぼ連行されたに等しく、その状況ではエマにも見届ける余裕があろう筈もなかった。歓迎されないまでも、連行という罪人扱いをされるとは思ってもみなかった。

 ここでもまた、エマは自分の描いていたティターンズ像と現実の差を見せつけられた気がした。いや、今までは見ていなかっただけで、気づきもしなかったのだと今なら理解できる。

 ハンガーが、願わくば隣同士であって欲しいと言いたいところだが、贅沢を言える状況ではない。そもそも《01》と《03》であり、隣合わせはまずない。精々が一つ空きである。だが、そうでなければ、時間的なロスを考慮に入れて動かねばならない。エマの合図のタイミングが難しくなるだろう。エマにとっては仲間のティターンズの整備兵や警備兵を力ずくで排除することは無理だ。カミーユとしてはエマに
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