第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第三節 決断 第一話(通算91話)
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して」
本人は穏やかに言ったつもりだろうが、聞いている者からすれば、穏やかさからは程遠い。だが、エマは抗うことの時間の無駄を考え、受け流した。カミーユはエマに年相応以上の包容力を感じた。
(ユイリィがこうなら、いいのにな……)
カミーユに対するユイリィの態度は姉か母親のようだった。ほんの少しユイリィの方が早く生まれたからと言っては、お姉さん振るのだ。
ユイリィが嫌いなわけではない。だが、常についてくるユイリィが思春期になるにつれ煩わしかった。しかし、それは照れ隠しだ。仲間から囃し立てられたりすると、仲間外れにされたくなくて、ついユイリィにつっけんどんな態度をとってしまっただけのことだ。それでもユイリィは構わず介入してきた。幼なじみの無遠慮さか、意識的な行動なのかは、解らなかったが、多分、無意識なのだろうとカミーユは思っている。ユイリィほど色恋沙汰から無縁な存在はないと感じていた。
そんなカミーユが軍人を志したのは、力がなければ何も守れないと思ったからだ。ユイリィの笑顔を守りたい。ただ、それだけだった。それは愛でも恋でもない。
今では、スペースノイドの自由と権利などと一丁前の口上を宣うが、根本はそこにある。もし、サイド7駐屯軍に配属されていたら、ティターンズにこき使われていたのだから、グラナダに配属されたのは幸運以外何物でもなかった。
「息子さん――カミーユ・ビダン少尉に反政府運動組織との接触嫌疑が掛かっているんです」
エマがはっきりと口にした。
ヒルダは青ざめた顔をして、カミーユを見る。エマを後押しするように大きく頷いてみせた。
「カミーユっ!お前……」
「俺は反政府運動なんてやってない」
唇まで血の気の引けた母親を憐れんだ目でみて、カミーユは断言した。あながち嘘でもない。《アーガマ》はグラナダの所属艦であり、カミーユはグラナダ配属のパイロットである。単にグラナダ基地の司令が反政府運動組織のメンバーだっただけだ。
苦しい言い逃れであっても、事実は事実なのだ。その辺りの配慮はエゥーゴにもある。多国籍軍であるが故に、逃げ道を用意しない訳にはいかない。特にジオン共和国を連邦の内戦に捲き込もうというのだから、念には念を入れていた。
「一緒に脱出してくれるね?」
ヒルダは強張った顔のまま頷いた。
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