【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第2章】第一次調査隊の帰還と水面下の駆け引き。
【第3節】メグミの不安とゲンヤの懸念。
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しら特殊な能力を持っているのだ』ということも、頭では理解しているつもりなのですが、それでもやはり、この状況はメグミにとって随分と心配なものでした。
(彼女自身は、『すぐ隣にいる「魔力のある相手」となら、かろうじて念話が使える』という程度の、ごく微弱な魔力しか持ち合わせていません。)
そして、新暦95年4月27日の朝。
今日は「三曜日」ですが、ゲンヤもトーマも揃って振替休日です。
メグミ(25歳)はキッチンで食後の家事をひととおり終えると、生まれてまだ10か月あまりの赤子を揺り籠から抱き上げ、リビングへと向かいました。少し話がしたくて、ソファーに深々と座っているゲンヤの隣にそっと腰を下ろしたのですが……見ると、ゲンヤは堂々と腕を組んだまま静かに寝息を立てています。
(これは……起こしちゃ悪いかしら?)
メグミはそう思ったのですが、抱き抱えていたマユミが不意に手を伸ばし、赤子なりに懸命に声をかけながら祖父ゲンヤの肩を叩きました。
「じーじ。じーじ」
可愛い孫娘の声を聞くと、ゲンヤもすぐに目を開けます。
「おお? どうした、マユミ」
「だーこ、だーこ」
「お〜。よしよし」
ゲンヤは喜々として、メグミの手からマユミを受け取り、抱き抱えました。ちらりと時計を見てから、ふと苦笑いを浮かべて独り言をこぼします。
「なんだ、もうこんな時間か。いつの間にか、少し寝ちまってたみてぇだなあ」
「お疲れのところ、起こしてしまって、すみません」
「いや。それは別にいいんだがよ。……ん? トーマとサトルはどうした?」
「天気がいいからと、二人で散歩に出かけました。トーマは『小川に沿って歩いて、できれば川向こうの初等科学校まで足を伸ばしてみる』みたいなことを言ってましたけど」
「何だって、また……。ああ、そうか。来年の今頃は、サトルももう学校か。……早いもんだなあ。まだ、この間、生まれたばかりのような気がしてたんだが」
「それ、もう6年も前のことですよ。お父さん」
ゲンヤは軽く笑い声を上げてから、ふと真顔に戻って続けました。
「そうだなあ……。お前がこの家に来てからだと……もう12年になるのか」
メグミは何やら少し恥ずかしげな口調で『はい』とだけ応えます。
ゲンヤはふと昔のことを思い起こしました。
(そのまた12年前には、例の空港火災事件があって……。さらに12年前っていうと、俺が30歳。クイントと初めて出逢う前の年か。……あの頃には、自分がまさかこんな人生を送れるとは夢にも思ってはいなかったなあ……。)
クイントの不妊は最初から聞かされていました。だから、ゲンヤは当初、ずっと二人きりで生きてゆく覚悟を決めて、彼女と結婚したのです。
『どうしても子供がほしくなったら
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