【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第2章】第一次調査隊の帰還と水面下の駆け引き。
【第1節】アインハルト執務官、帰還せず。
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伝えておくことにしました。
しかし、ヴィヴィオたちに対しては、カリム総長ともよく相談した結果、カリムの方から伝えてもらうことになります。
そこで、メディアに公式発表が流れた直後、4月26日の晩に、カリム総長は自分の執務室に高町家の三姉妹とその世話係のシスターたちを呼び、『これは、まだあくまでも特秘事項なのですが』と念を押した上で、彼女たちにその事実を報せました。
しかし、ヴィヴィオはそれを聞くと、慌ててカリムにこう問いかけます。
「それで! ……それで、アインハルトさんは今、無事なんですか?」
「正直に言うと、よく解りません。ただ……もし本当に第一次調査隊が報告したとおり、その世界が800年前のベルカを『模範』としているのであれば……少なくとも、身体的な意味での『拷問』を受けている可能性は極めて低いだろうと思います。その時代のベルカには、まだそのような風習は無かったはずですから」
カリムは、つい職業上の癖で「正確を期した表現」をしてしまったのですが、その言い回しは、ヴィヴィオの不安を鎮めるには少々不適切なものだったようです。
「可能性が『極めて低い』ということは……つまり、『ゼロではない』という意味ですか?」
ヴィヴィオにそう言われて初めて、カリムは自分の言い方がかなり拙かったことに気がつきました。
ですが、一度吐いてしまった言葉を口に戻すことはできません。
カリムとしても、平素は何事につけてもポジティブなヴィヴィオが、今回に限ってここまでネガティブな考え方をするとは、全く想定していなかったのです。
(やはり、妊娠中のせいで、メンタルも少し不安定になっているのでしょうか。)
「いえ。今のは、単なる言葉の綾で……。確かに、『絶対にあり得ない』とまでは言い切れませんが、『ほぼ、あり得ない』と言って良いと思います」
カリムは慎重に言葉を選びながら、そう答えました。
もちろん、ヴィヴィオの辛い気持ちに気づき、それを何とかしなければと思ったのは、カリムだけではありません。
その場に居合わせた者たちは全員が、ヴィヴィオの気持ちを何とかなだめようとして、あれやこれやと言葉をかけました。
ヴィヴィオも自分が周囲に気を遣わせてしまったことを察して、努めて「平静を取り戻したかのような態度」を装いますが、それがまた、傍目にも『無理をしている』と解ってしまうような装い方なので、全員がもう、それ以上は何も言えなくなってしまいます。
「とにかく、今ここで私たちがいくら彼女の身を案じても、それで彼女の許へ実際に何かが届く訳ではありません。先程の公式発表でも言っていたとおり、管理局も急いで第二次調査隊を送り込み、『現地で多少は乱暴なことをして
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