第六十一話 曼荼羅その七
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「滅茶苦茶ええお料理よ」
「そやね」
「ましてその頃は卵が高価で」
昭和三十年代はそうであった、だから尚更当時の子供達は卵焼きが好きだったということである。これもまた歴史である。
「尚更よね」
「好きやったんやね」
「そうよ」
「卵焼きはええ食べもんや」
羅も言った。
「ほんまな」
「ああ、お醤油かけたら」
施も言ってきた。
「ご飯にどれだけ合うか」
「それでお酒にも合うしな」
メルヴィルは綾乃の言う通りにと述べた。
「ええわ」
「それも結構色々なお酒に合うし」
トウェインはそれでと語った。
「ほんまええ食べものや」
「そやね、けど最初はいらんわ」
綾乃は仲間達の言葉に頷きつつあらためて言った。
「巨人は」
「ああ、何で巨人ばかり主人公やねん」
芥川は心からの嫌悪を込めて言った。
「江戸っ子の幸田が言うてるやろ」
「日毬も麻友ちゃんもな」
シェリルは幸田と同じく東京出身の二人の名前も出した、尚幸田と麻友は下町育ちであり日毬は武家の家の出である。
「そうやな」
「三人共ほんまの江戸っ子は巨人応援せんって言うてるわ」
「ヤクルトやてな」
「ヤクルトは生粋の東京のチームや」
「江戸っ子のな」
「東京音頭が応援歌の」
「それで東京のチームや」
まさにそれであるとだ、シェリルは断言した。
「ヤクルトは」
「そやからほんまの江戸っ子はヤクルトを応援してな」
「むしろ巨人は敵とみなす」
「そうや、ほんま巨人はあかん」
芥川は口をへの字にさせて言い切った。
「間違っても漫画の主人公にしたらあかん」
「敵やな」
「それも弱くて恥ずかしくてみっともなくて格好悪い」
「リアルの巨人を忠実に再現すべきやな」
「その通りや、巨人に栄光は似合わん」
「恥が似合うな」
「巨人には無様な負けがよく似合うわ」
それもこれ以上はないまでにというのだ。
「ほんまな」
「あんな格好悪いチームないさかいな」
「そやからな」
それ故にというのだ。
「ほんまな」
「巨人は漫画の主人公にしたらあかんな」
「他のチームであるべきや」
「あんな糞親父の出てる漫画は論外やな」
「あれは有害図書や」
巨人の様な邪悪なチームを目指し主人公としている、これを有害図書と言わずして何と言うのであろうか。
「侍何とかも黒い何とかもちかいの何とかもな」
「全部あかんな」
「炎の何とかでもな」
「ほんま昔は巨人漫画多かったな」
中里もここまで聞いて思った。
「どんだけ昔の日本モラル崩壊していたんや」
「巨人軍大鵬卵焼きって言うてた子供がや」
芥川はその中里にも話した。
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