【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第1章】教会本部、ヴィヴィオとイクスヴェリア。
【第2節】冥王イクスヴェリアの哀しみ。
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ていました。小さな部屋は倉庫の類、大きな部屋は礼拝所の類でしょうか。
なお、下から三番目の踊り場の左右にある倉庫には、それぞれ奥の方に「隠し扉」があり、共通の「隠し部屋」へとつながっていました。
これらは、すべて合わせて、一個の立体的な「地下神殿」と呼んだ方が良いのかも知れません。
ただし、実際には、今も急速に進行中の「海面上昇」によって、その砂浜も漁村も地下神殿への扉もすでに水没しています。近隣の住民たちも、すでに遠方への移転を余儀なくされており、その神殿の中からも、めぼしいものはすべて(おそらくは、住民の移転先にある新たな神殿へと)持ち去られていました。
この地下神殿は今やただの「廃墟」であり、高台の上の社の近辺もまた今では完全に「無人の土地」なのです。
しかし、だからこそ、フォルクハルトはその一帯の土地を、「慢性的に金欠」のミッド中央政府から金で買い取ることができました。
また、政府筋によれば、『いずれ、その女神像は全体が水没するだろうが、それでも、断崖の上にまでは海水は来ないはずだ』とのことです。
そこで、フォルクハルトはまず水没した扉を密閉し、構造を強化して海水の侵入を完全に阻止し、一番下の踊り場の近くにまで来ていた海水もすべて排水しました。さらには、文化遺産保護の名目で、高台の上に「巨大な倉庫」のような、無味乾燥な外観の建物を建てて「小さな社」全体を丸ごと包み込み、外部からはその社が全く見えない形にします。
その上で、彼は、下から三番目の踊り場の奥にある「隠し部屋」に、ベルカ世界から持ち出した「冥王専用の、長期休眠用のカプセル」を安置しました。
そして、計算どおり、イクスヴェリアはそこで一時的に目を覚ましたのです。
『技師たちの言葉によると、陛下の「残る休眠期間」は300年ないしは400年。おそらくは、350年前後だろうとのことです。
この部屋の扉は、二つとも、こちら側からしか開けられないように細工をしておきました。踊り場の扉や、社へ通じる扉にも、すでに同様の細工が施してあります。
いずれ、社のすぐ外の、よく目立つ場所に「直通の通話機」を設置しておきますので、どうぞ、お目覚めになられたら、失礼ながら御自分の足で階段を昇って地上に出て、その通話機からご連絡ください。私の子孫が、必ずやお迎えに上がります』
それを聞くと、イクスヴェリアは安心して、また永い眠りに就きました。
やがて、海面の上昇により、その地下神殿は「海底神殿」と化しましたが、その時点ではまだ、『後に、この海底神殿からそれほど遠くは無い場所に「新首都クラナガン」が築かれることになる』などとは誰にも予想できてはいなかったのです。
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