【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第1章】教会本部、ヴィヴィオとイクスヴェリア。
【第1節】聖王教会本部の側の動向。
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新暦95年の1月25日、ミッドのベルカ自治領の中南部では、地球の単位で言う「マグニチュード9.0クラス」の巨大地震がありました。
ミッド第一大陸の「北岸部」は昔から地震の多い土地でしたが、今回の震源地はそうした海岸部からは250キロ以上も南に離れた内陸部です。
実のところ、その一帯は『地震の回数こそ北岸部よりは格段に少ないが、何百年かに一度は必ずこうした巨大地震が来る』という土地柄でした。しかし、前回の巨大地震は、ベルカ人が〈大脱出〉でこの地にやって来る以前の出来事だったため、現地で生まれ育ったベルカ系の人々は、誰も地震対策など真面目に考えてはいなかったのです。
幸いにも、今回の巨大地震は震源も深く、また、その真上の土地は昔から人間がほとんど住んでいない自然保護区だったため、「地震による直接の死者」は(その地震の規模に比べれば)驚くほど少ない数で済みましたが、震源が深かっただけに、大きく揺れた範囲は大変に広く、ベルカ自治領の中南部における「建物の倒壊などによる被災者」は相当な数に上りました。
実際、震源地からは優に100キロ以上も離れた、ベルカ自治領の南端部にある「教会騎士団本部の直営地」でも相当な被害が出てしまったのですが、中でも〈はじまりの聖堂〉が丸ごと倒壊してしまったことは、聖王教会にとって精神的には大きな痛手でした。
それでも、聖王オリヴィエの時代からずっとその聖堂の中で燃え続けていたと伝えられる「聖なる炎」はかろうじて死守されました。それを受けて、聖王教会ミッド総本部の大司祭長は、ベルカ自治領全土に向けて次のような主旨の演説をします。
『形あるものは、いつか必ず壊れ、命あるものは、いつか必ず死ぬ。それは、この物理次元における絶対則です。
しかし、それを悲しむ必要はありません。目に見える形が失われることは、決して何かが完全に終わったことを意味するものでは無いからです。
聖王陛下が肉の衣を脱ぎ捨てて昇天された時、そこで何かが終わったでしょうか? いいえ。そこから始まったのです。
かつてベルカ世界が滅びた時にも、ベルカの民は滅び去ることなく、種子のように数多の世界に播かれ、また現代に多くの実りをもたらしています。
聖王陛下の御身はこの地上から失われても、その身魂は今も天から我々を導いてくださっています。
いかに聖王陛下といえども、地上で肉の衣に縛られたままでは、すべての民を導くことはなかなかできなかったでしょう。陛下もそれを御存知だったからこそ、みずから現身を捨てて天へと昇られたのです。
目に見える形が失われることは、決して「終焉」を意味するものではありません。それは、ただ単
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