第二章
18.サマルトリアの王子(3)
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かったため、どうやらそうではないらしいことには安堵した。
「ありがとうございます。ただ、もう終わりましたけど……」
「え? あ、本当だ。あー、遅かったか。残念!!」
アチャー、と大げさに頭を抱える青年。
「あ! それより! 薬草をお持ちではありませんか?」
「持ってる持ってる! 沢山あるから使って!」
「本当ですか!? よかった!」
大きな道具袋を背中にかけ、今そっちに降りるから、と何やら棒を操作する。
しかし。
「あ」
羽音がやんだ。
「やばっ、燃料切れた!」
「えっ」
突然青年が台座もろとも落下を始めた。
慌ててフォルが手を伸ばすと、青年も慌てて手を伸ばす。
「わっ」
間一髪、手がつながった。
フォルは外に引きずり出されそうになるのをなんとか耐えると、思いっきり手に力を入れて、手前に引いた。
折り重なるように、倒れた二人。
「ごめん。助けに来たつもりが助けられちゃった」
「いえとんでもない! ちょうど薬草がなくて困ってましたので! ものすごく助かります!」
さっそく重傷の二人に薬草を食べさせると、謎の助っ人にフォルは深々と頭を下げた。
「本当にありがとうございました。あなたは空を飛んでいたように見えましたが……。神様か精霊様ですか」
「それは全然違う。神や精霊だったらうっかりローレシア城の上を飛んで撃ち落とされそうになったりしないって」
ちなみに座ってたアレはたぶん今の落下で壊れただろうから、もう飛べないなあ――と青年は苦笑いする。
「ベリアル様たちのように、あなたも異世界から来たおかたですか?」
「うーん、それも正解とも正解でないとも言えるというか。ちょっと難しい話になりそうかな……あ、『手みやげ』、もう来るよ」
「え?」
すると、足音が聞こえ始め、それが近づいてきた。
フォルにとっては聞き覚えのある足音だった。
「あ」
階段から現れたそれは、まぎれもなかった。
丸みを帯びた青い金属の体。頭部には赤い一つ目が光っている。右手には大きな剣を持ち、左手には弓。重厚かつ俊敏そうな足が、四本。
「キラーマシンさん!」
「さっき、塔の裏で動いてないやつを見つけたんだ。うわー懐かしいなって思って動かしてみた」
その個体は、肩や腕、脚の関節から植物が生えており、小さな花も咲いていた。たしかに、永く眠っていたに違いない雰囲気だった。
「彼らを動かせるのは悪魔神官ハゼリオ様と、その研究報告を受けているハーゴン様だけだったはずです。あなたはいったい――」
呆気に取られていると、またのんびりした、だがフォルにとっては背筋の凍る声が聞こえてきた。
「いやー、まいったな」
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