第二章
18.サマルトリアの王子(3)
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うことである。
「……!」
フォルが目を開けると、サマルトリアの王子が倒れていた。
思わぬ結果に驚くが、すぐに味方二人の元へと駆け寄った。
「ヒースさん! シェーラさん! 大丈夫ですか。しっかりしてください」
「だ、大丈夫、じゃ」
「オレも、大丈……夫」
「ひどいケガです。いま薬草を……って、燃えてる……!」
道具袋は焼けており、中の薬草も灰となっていた。
「問題ない。少し休んでいれば、動けるようには、なるわい」
「オレも平気だ。バーサーカーを、なめんなよ」
気丈にふるまう二人ではあるが、どちらも血がドクドクと流れ出ており、危険な状態なのは明らかだった。
「すみません、私が不甲斐ないばかりに。すぐに止血を――」
一刻の猶予もない。
知識としては持っていても実践経験はないため、かなり怪しい手つきではあるが、止血の作業を急ぐ。
シェーラに対しては、酷く出血している部位の心臓側を、燃え残ったローブの切れ端を使って縛っていく。彼女は服が激しく切り裂かれているため、フォルとしては直視できない部分もある。そのようなところからは目を逸らしながら、なんとか作業をおこなった。
ヒースは体が大きく縛れないため、出血の特にひどい箇所には布を当て、手で押さえる。
これでなんとかなったのかどうかはわからない。
ああ、薬草が無事だったら――とフォルが天を仰いだときだった。
「?」
何やら、ブーンというハエのような音がした。
事前の予習で、以前この塔にドラゴンフライが住み着いていたとフォルは聞いていた。
彼らの音だろうか? サマルトリアの王子が塔をのぼったことで離散していた個体が戻ってきたのだろうか?
そう思ったのだが、どうやら違うようだった。
「生き残りの魔術師くん!」
その若い声は、外から聞こえた。
見ると……塔のすぐ外の空中、フォルの目線より少し上方に、人が浮いていた。
「……!?」
いや、正確には、羽がないのに羽音がする平べったい台座のようなものの上に、簡素な服装をした黒髪短髪の青年が座っており、その状態で浮いていた。
台座の前方には青年の肩の高さくらいの棒が直立しており、彼はそれを右手で握っていた。
「あなたは……誰ですか?」
「おれは君の命の恩人。今日は君を助けるだけでなく、部下の一人に入れてもらうために来た。手みやげもあるよ。さあ、敵はどこ? あのときみたいに、これでどかーんとやれるよ」
そう言って青年は乗っている台座の前方を、左手の人差し指で示す。よく見ると、そこには丸い筒が一対ついていた。
何がなんだかさっぱりわからないフォルだったが、また敵が現れたのであれば絶望以外の何物でもな
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