第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第二節 人質 第三話(通算88話)
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ア》から通報を受けた段階で脱出は困難になる。
――いいえ、僚艦に移乗もしてないわ。どうやら、マークされていたのはメズーン中尉とあなただけだったみたいね。あとは、スクワーム少尉のご家族は捕まらなかったか、ね。
メズーンの関係者としての人質と想定していたから、ランバンがマークされていないという可能性は考えもしなかった。
つまり、メズーンとは違う理由でカミーユがマークされていたということになる。
――俺……?
カミーユは言葉を失った。自分は特別な人間ではない。当たり前にいる普通の人間なのだから。理由に心当たりのないカミーユは、エマに問い掛けようとして、制された。
――今は詮索をしている場合じゃないわ。カミーユはバイザーを下ろして私の後ろについてきて。
エマの言う通りだった。
詮索はあとでもできる。だが、時間を無駄にすれば作戦の成功確率は低下するのだ。ヘルメットの両わき――丁度耳のところを軽く押すとバイザーが下りる。顎のところにある安全錠を掛けることで、バイザーの開閉をロックする仕組みだ。戦闘中の衝撃などでバイザーが開いてしまわないようにという用心である。気密については頚のうしろにあるファスナーとマジックテープが減圧で完全吸着するようになっていて、原則他人に確認してもらうことになっていた。アストロノーツ――宇宙作業員やパイロットたちが二人一組なのはこの原則があるからだ。
監視カメラはエマが細工して、三十秒前の映像がリピート流れるようになっているということだが、だからといって安心はできない。急がなければならないのだ。カミーユは、自分がベッドに寝ているように見せ掛けて、部屋を出た。
――先ずは、フランクリン大尉よ。
気持ち的には母親だけにして、父親を置き去りにしたい気分だったが、そうもいかなかった。黙って頷いたまま、エマに従う。
フランクリンの部屋はカミーユが案内された下士官区とは違い、士官区にあった。一応フランクリンはティターンズの大尉であり、一般将校でいえば中佐相当待遇である筈だが、さすがにティターンズとはいえ艦内の部屋などに特権を適応できるほどの余裕は設計上できなかったのだろう。
「フランクリン大尉、エマ・シーンです」
礼儀正しく外からインターホンを使うエマをみて、カミーユは育ちの良さを感じつつも、こんなときに――と思わないではなかった。が、言い合う時間こそ惜しい。
――プシュッ
ドアが開いてフランクリンが姿を見せた。
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