第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第二節 人質 第一話(通算86話)
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ミーユが出ていった理由が、自分にあるとは思わないのがフランクリンという男だった。
「ジャマイカン少佐、妻は……」
「中尉には既にミーティングルームに行ってもらった。大尉も急いでくれよ」
フランクリンはモニタを大慌てで消すと、ミーティングルームへと急いだ。妻に確認すべきことがある。息子よりも、妻と先に会わなければならない。そして、自分の立場を守らなければ……。そして、マンションで独り待つ彼女は自分しか頼るものはないのだから。
「ヒルダ……」
ブリーフィングルームに妻の姿を見て、声を掛けようとした。が、妻の肩越しに息子の顔を見つけて、絶句した。
意思の強そうな一見女と見間違うばかりの青年がそこにいた。数年振りの懐かしさや家族団欒という雰囲気とは全く異なる、何しに来たんだと言わんばかりの非難顔だった。
「……カ、カミーユ」
カミーユはふんっと顔を背け、ヒルダと何言か話している。あからさまな無視にフランクリンはむっとしたが、子供の態度にいちいち反応するのは大人気ないと堪えて問い掛けた。
「どういうことだ?」
「どうもこうもない。母さんにも言ったけど配属先がグラナダだっただけさ」
詮索を拒絶した息子を前に狼狽える訳にはいかない。妻を促して事情を確認しようとするがヒルダも曖昧なままだった。
「一体どうなっているんだ」
「私にも解りませんよ。カミーユが反政府組織から投降してきたなんて……」
「だから、言っただろ。配属先がグラナダだっただけで、反政府組織なんか知らないって。エマ中尉に知らされるまで何も知らなかったんだ。エマ中尉から頼まれて、《ガンダム》も取り戻して来たのにっ」
なんだってこんな扱いを受けなければならないのか。知ったから脱出してきただけだというニュアンスを残して言葉を切る。フランクリンにはティターンズの対応の方が理解できる。自分と妻が確認するまでは、潜入を疑わなければならない。だが、カミーユにとっては不満の種だった。
「落ち着くんだ、カミーユ」
父親の威厳を取り戻そうと、カミーユに向き直る。しかし、カミーユはそんなフランクリンの態度さえも気に入らなかった。
「そんなことより、なんで親父とお袋がここにいるんだ?いつから艦付きになったんだよっ」
いるはずのない二人がここに居るために、カミーユは行動に制約が掛かってしまった。いくら仲が悪いとはいえ、両親には違いない。だから身動きが取れないのだが、それが仲間を危険に晒している。そこに対する責任を感じざるを得なかった。
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