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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第196話:人ならざる者の苦悩
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「……アタシも、一度はこの命を捨てようとした。いや、捨てても構わないと思った。誰かを助ける為、颯人を助けられないならこんな命要らないと思ったもんだ。でも、生きてなきゃ、先には進めない」
「アダム……アンタは何百年もの間、1人で寂しい思いをしてきたんだろ? なら、アンタはまだ生きるべきだ。折角この世界に生まれてきたのに、寂しい思いと嫌な思いだけの人生なんてあんまりだ。アンタはまだ、生きるのを諦めるには早すぎる」
颯人と奏の静かな言葉に、気付けばアダムはじっと耳を傾けていた。そして、2人の話が終わり暫しの静寂を経て、アダムはその巨体をゆっくりと起き上がらせた。
アダムが起き上がったのを見て、カリオストロとプレラーティが身構える。が、2人の警戒に反して他の者達は落ち着いた様子だった。響達には分かったのだ。アダムからはもう、他者を傷付けるような激情が感じられない事に。
それを証明する様に、アダムは立ち上がると穏やかな目で颯人と奏を一瞥すると、何も言わずに2人に背を向け何処かへと歩き出す。その途中、アダムは立ち止まり何かを拾い上げた。
「ア……アダ、ム……ダ……ダキ…………ダキシメ……ア、アイ……アイアイ……シシシ……」
アダムが拾い上げたのは、彼自身が自身の欲望の為の捨て石としたティキの残骸であった。響の攻撃をまともに喰らい、上半身だけとなりスクラップ寸前の彼女は、今にも機能を停止しそうな様子で残された力をアダムに甘える為だけに使っていた。それしか彼女には残されていないから。
「ティキ……」
「アダ、ム……ナ、ナカナイ、デ……デデデ……」
ティキが絞り出す様に口にしたその言葉は、勿論正確ではない。アダムもまたオートスコアラー。アヌンナキによって作られた人形である彼に、涙を流す機能など備わっている筈がない。
だが壊れる寸前のティキは確かに見たのだろう。アダムが、その両目から涙を流す光景を。彼女は最後の力を振り絞って、涙を流すアダムを元気づけようとしてくれたのだ。
「ア……アタシ……ツイテル。イツ……イツデモ……アダ、ム……ノ……ソバ、二…………」
そこでティキの動きが完全に止まった。文字通り糸が切れた人形の様にだらりと腕が下がり、必死に言葉を紡いでいた口は開いたまま動かない。完全に壊れたティキを、アダムは優しく抱きしめるとそのまま静かに去っていった。
颯人達はそれを黙って見送るのだった。
***
アダムはその後、いずこかへと姿を消した。日本政府はその行方を追ったが、足取りを掴む事は出来ず完全に姿を見失っていた。
統制局長であるアダムを失った事で、パヴァリア光明結社は事実上の壊滅となる。それでめでたしめでたし……とはならないのが世の儘ならない
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