第六十一話 曼荼羅その五
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「アホみたいな猛訓練もそうやが」
「意味はないな」
「そや、合理的で的確な」
そうしたというのだ。
「トレーニングや訓練こそがな」
「よおするな」
「修行もな」
「ただ単に厳しい、辛いことしてもな」
「強くならんし」
それにというのだ。
「人としてや」
「高まることもないな」
「そや、仏門でもスポーツでもな」
「そういうことやな。しかし」
「しかし?」
「とある漫画の。さっき話に出た大リーグの」
「ああ、その漫画な」
中里もわかって頷いて応えた。
「その猛特訓やってた」
「あの漫画は意味ないことしててんな」
「あの糞親父がな」
「そうさせててんな」
「あの親父は有名や」
それこそ長きに渡って実に多くの漫画でネタにされてきた程だ、それはこの漫画のキャラクターの多くが当てはまっている。
「糞親父でな」
「毒親やな」
「ああ、まさにや」
中里は強い声で言い切った。
「毒親のや」
「サンプルやな」
「そや、そんな猛特訓させてな」
意味のないそれをというのだ。
「ちゃぶ台ひっくり返してな」
「アニメではやったな」
「原作ではやってへんけどな」
「それでもやったな」
「食いものを粗末にしてや」
そうしてというのだ。
「息子を苦しめる為に他人も利用する」
「試練とか言うてやな」
「そんなや」
「毒親やな」
「僕は思った」
中里は無表情で話した。
「戦争でこの親父だけ死んでたらってな」
「ああ、二次大戦でやな」
「多くの人が死んだけどな」
「あの親父は生き残ったな」
「そして復員してきたんや」
巨人の星はここからはじまると言っていい。
「それでや」
「あの親父だけはやな」
「死ぬべきやったわ」
「沢村栄治さん達は生き残って」
「阪神の景浦さんも戦死したけどな」
その名前があぶさんのモデルになったという、沢村栄治と数多くの名勝負を繰り広げたことでも知られている。
「あの親父はな」
「死ぬべきやったな」
「ああ、心から思ったわ」
「そうやねんな」
「あの作品は父子の愛がテーマらしいが」
それでもというのだ。
「ああいう親父はな」
「いらんな」
「ちなみにあの親父死んでたな」
芥川がこのことを話した。
「アニメの方やとな」
「ああ、新の最終回やな」
「そや、そっちでな」
「死んでるんやったな」
「原作では死んでへんが」
そうであるがというのだ。
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