服従させる魔法《アゼリューゼ》
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振ると、氷ごとゾンビたちが粉々に砕け散った。
「あら。怖い。随分と嫌われたものね。フロストノヴァ」
「好かれているとでも思ったのか?」
フロストノヴァとアウラ。
ほとんど表情を動かさずとも、二人の間には敵意という名の緊張が走っていた。
「いいえ。全然」
アウラは無造作に天秤を向ける。
当然の如く傾きだす天秤。
だが。
「ふんっ!」
放たれる氷。
それは、彼女の手元を的確に穿ち、その天秤を氷の中に固定した。
「二度も同じ手が通じると思うのか?」
「チッ……」
舌打ちをしたアウラ。
この隙を逃す手はない。
『サンダー プリーズ』
ウィザーソードガンに指輪を読み込ませることで、その刀身に雷を宿らせる。
立ち上ると同時に放つ雷の斬撃。
アウラは屈んで避け、ハルトやフロストノヴァから離れた。
「本当に面倒ね、あなた」
アウラは氷漬けにされた天秤を見下ろしながら毒づいた。
「……まあいいわ。アゼリューゼは、これから新しい手駒を操ることはできないけど……すでに手中に落ちた者までは解放されない」
「あなたはそうでもなさそうね」と、ハルトを見ながら呟いたアウラは、懐に天秤をしまった。
「でも諦めろよ」
ゾンビを蹴り倒したコウスケが、ダイスサーベルをアウラに向けている。彼の隣には、結梨を傍に置いたままのえりかもいる。
「増えねえんだろ? なら、もう劣勢になることはあっても優勢にはならねえぜ?」
「どうかしら?」
アウラが不敵な笑みを浮かべた直後、地面が揺れ出す。
「何だ……?」
「っ! ウィザード! 足元だ!」
フロストノヴァが叫ぶ。
彼女の言う通り、キャンパスの舗装された道路に大きな亀裂が走る。
ハルトはフロストノヴァの指摘に従い、その場を飛び退く。同時にアスファルトが砕け、地の底より黒い長足が伸びた。
「ここ凄いわね。こんなものまでいるなんて」
驚くハルト、コウスケ、エリカ、フロストノヴァ。そして怯える結梨。
唯一、アウラだけが表情を変えない。
「何だ、コイツ……!?」
「さっきまで学生っぽいゾンビがいるのも大概おかしいがよ、何でこんな化け物まで……!?」
コウスケは、もう一本伸びてきた白い足を見上げながら呟く。
二本の黒い部位は、そのまま地の底に眠っていた胴体を引き上げる。だが、その胴体は、白い部位から連想できるものではない。
茶色の胴体。その胴体を持つべき脊椎動物であれば、手足は合計四本。
だが、今目の前にいるこのゾンビは、手足が合計六本あった。しかも、各腕はそれぞれの形状が異なっている。左右の前足二本は、今しがた目撃したそれぞれ黒をベースとし
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