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邪教、引き継ぎます
第二章
17.サマルトリアの王子(2)
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の速さを警戒はしているため、二振り三振りと欲張らず、体のバネを生かし自分の攻撃が終わるやいなや後方に跳ぶ。

 ところが。
 着地した瞬間に、少女が身にまとう緑色の服の腹部の箇所が、横に大きく裂けたようにパカリと開いた。

「……!」

 サマルトリアの王子を見ると、すでに剣を振り終えている体勢だった。素早く間合いから離脱したはずのバーサーカーの少女の体を、想定を超える凄まじい速さで振り抜かれた剣が、わずかに捉えていたのだ。
 裂け目からはよく締まった褐色の腹筋がのぞいている。血は出ていない。生身まではかろうじて届かなかったようだ。

 フォルの目には何が起きたのかわからないほどの戦慄の速度だったが、恐怖心を抑えて自身も踏み込み、杖での突きを入れた。
 が、ひらりとかわされてしまう。

 そのかわし先を計算したかのように突き出された、老アークデーモンの三つ又の槍。
 正確無比。これはかわせないと判断したサマルトリアの王子は、盾で受けた。すさまじい金属音がした。

 フォルがふたたび杖を出すも、当たらない。
 体勢を立て直したバーサーカーの少女もまた飛び込んでいく、が、やはり斧は空を斬る。

 彼女は武器が斧であるため、他の二人よりも間合いを詰める必要がある。
 そこをまた狙われた。

「あぁっ!」

 今度はサマルトリアの王子の剣に捕まってしまった。
 彼女は離れ際に一振り、二振りと斬られ、盾の使用も間に合わなかった。声があがり、顔が苦悶に歪む。
 後方に着地するも、今度は胸から腹部にかけて斜めに服が大きく裂かれていた。褐色の素肌がのぞき、さらにそこから血がが線上に噴き出す。

「……うっ」
「シェーラさん!」
「大丈夫かっ」
「だ、大丈夫だ。浅いっ」

 そう言いながらもうずくまる少女。
 追撃を許すまいと老アークデーモンとフォルで時間稼ぎの手数を出すも、二人だけではサマルトリアの王子の余裕を完全に奪うことはできなかった。

 そして、来てしまった。

「ベギラマ」

 サマルトリアの王子が呪文を唱え、細身の剣をフォルたちに向けた。普通はこれだけ忙しくされると呪文はなかなか放ちづらいはずなのだが、熟練度が高くタメが少ないのだろう。すぐに細身の剣が大きな炎を帯び、そこからフォルたちに向けて発射された。

「いかん、デカいぞ」

 ここで老アークデーモンが驚きの行動に出た。
 防御体制を取らず、逆にベギラマの源に飛び込むようにサマルトリアの王子に向けて突っ込んでいったのである。

「むうぅっ」

 老アークデーモンが火だるまとなる。
 事前の想定を超える威力であることを察し、他の二人はまともに食らえば耐えられないと判断。自分の体を盾にして炎を食い止める判断をした
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