第六十話 酔いどれ詩人その十二
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「健康的であることや」
「それも大事やな」
「そや、そのことも考えていこな」
「ああ、わい等も政やってるしな」
トウェインもそれならと応えた、そうした話をしながら雑煮を食べそれが終わるとまた冒険の旅を進めるのだった。
そして神霊達の階に行くとアブー=ヌワースは黄金の杯で上等のワインを飲んで香辛料を効かせたマトンを焼いたものを食べつつ一行に言った。
「これもわし等の仕事だから仕方ないな」
「あの、やる気ないですか」
「ないぞ」
トウェインにクッションの上に半分寝そべりつつ答えた。
「見ればわかるであろう」
「はい、よく」
「わしはこうして酒を飲んでな」
言いつつ実際に飲む。
「そして美女や美少年と遊ぶのが生きがいだ」
「それで詩を詠むんですね」
「そうする、しかし戦はな」
これはというと。
「剣も盾も興味がない」
「使い方も知らへんですね」
「うむ、だからな」
それでというのだ。
「興味がない、さっさと終わらせてな」
「そうしてですか」
「また飲みたい」
こう言うのだった。
「馳走を楽しみながらな」
「そうですか」
「出来るならこのまま飲みたいが」
だが、というのだった。
「それも適わんな」
「それはならんぞ」
ここで言ってきたのはマスルールだった、手にはアラビア独特の曲がった刀と処刑する者を座らせる敷きものがある。
「流石に処刑はしないが」
「怒るか」
「確実にな」
こう言うのだった。
「だから戦う様に」
「マスルール殿は厳しいのう」
「ヌワース殿が自堕落過ぎるのだ」
「ううむ、そうか」
「誰もそう思う、それでは今からな」
「戦うか」
「終わってからまた飲めばいい」
これがマスルールの主張だった。
「再びな」
「飲み続けてよくないか」
「仕事をすることだ」
「働いたら負けではないか」
「流石にそれはアッラーもお怒りになる言葉だ」
「そうなのか」
「貴殿もムスリムであろう」
ヌワースのこのことを言うのだった。
「ではアッラーのお言葉に従うのだ」
「最低限働かなくては駄目か」
「アッラーは寛大であられるがだ」
「最低限のことはせんといかんか」
「そうだ、では戦おう」
「仕方ないのう、ではそういうことでな」
ヌワースはマスルールとのやり取りを終えてあらためて一行に顔を向けて言ってきた。
「はじめるか」
「ほなそういうことで」
「さて、詠んでいくか」
腰を挙げると詩を謡った、すると。
忽ち蜃気楼の様に場がイスラムの街の様になってだった、四方八方から戦士達が出て来た。綾乃はそれを見て言った。
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