八、 透明な存在
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の少年は言葉にできなかった筈である。その衝撃といったならば、もう抑へやうがなかったに違ひない。抑へられなかったが故に斬首に及んだのだ。Knifeで殺した幼子の首を一刺しする度にあの少年は絶倫者のやうに射精をしてゐたことだらう。首をKnifeで切り刻む度にあの少年は全身に電気が走る如くに絶頂を味はひ、その快感にあの少年は全身を投身してしまったのである。あの少年は徹頭徹尾己の快感を貪りたいがためといふ超利己的な欲望にのめり込んでゐた筈である。つまり、欲望で自己完結してしまった哀れな存在であることを知らぬが仏とばかりに底無し沼の底へと辿り着いたことで、あの少年は、
――Eureka!
と、心の叫びを上げたに違ひないのだ。天にも昇る心地といふものを殺戮をすることで知ってしまったあの少年は、全身之欲望と化してギラギラ光る上目遣ひの眼差しを世間に向けながら、異様な妖気を放ってゐるのも知らずに街中をほっつき歩き、頭は殺戮に伴ふ射精といふ絶頂のことで一杯であった筈である。その存在を異様といふ言葉で片付けるのは忍びないが、異形の吾があの少年より先んじてしまったのであらう。そんな奇妙な存在だとは努知らず、あの少年の本質は丸ごとMasturbationになってしまひ、実存は本質に先立つに非ず、欲望が本質に先立つ存在として、動物をどう意味づけるかは難しい問題であるが、その問題は一まづ置いておいて、動物に失礼を承知でいへば、異様な動物となったのである。最早人間であることを断念したのだ。異形の吾があの少年を呑み込んで、獣として生存してゐたのである。
さて、ここでアポリアの出現である。それでも神神は、八百万の神神はあの少年を見捨てないのであらうか。「にんげん」を已めたあの少年に対しても神神は救ひの手を差し伸べるのであらうか。とはいへ、そもそも八百万の神神は異形のものである。この問ひはドストエフスキイの二番煎じにも劣る問ひでしかないが、しかし、神神の問題はどうしても持ち上がるのだ。何故なら、「にんげん」を自ら已めたものにも神神は慈しみの眼差しで「にんげん」を已めたものに対しても、見捨てないのだらうか。中国の影響でこの国には閻魔大王がずでんと存在してゐるものと看做されてゐるが、その論理でいへば、「にんげん」を已めたものは有無もいはずに神神に見捨てられる。それがこの極東の島国の道理なのだ。その少年には、地獄が待ってゐる。これがこの国の道理なのだ。神神は見捨てるが、親鸞を出すまでもなく、この極東の島国では人間社会はその少年を見捨てはしないだらう。この島国では人間社会が見捨てて、「死刑」に処せられない限り、人間社会は犯罪人を見捨てないのだ。尤も、その少年が死したときに閻魔大王が現はれ、地獄行きを告げるのは間違ひない。
しかし、この島国の人間社会は寛容かといふとそんなことはな
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