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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第98話 人と人
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と同意見さ。今さっきの徴兵規模調整交渉を無にするような言い草だが、もはや国家の、同盟の人的資源余力は限界を超えつつある」
「社会機構全体が軍を支えるどころか、国家を支えることができなくなりつつある。そういう事ですね?」
 原作でホワン=ルイ本人やレベロが言ってたセリフだ。そのままパクリで申し訳ないが、ホワン=ルイは実に興味深そうな表情を浮かべて俺に応えてくる。
「なるほどね。シトレ大将が君を早期に軍から引き離して、政治家にするようレベロに働きかけるのも分かる気がするね。戦略思考回路がまったくもって前線勤務の軍人じゃない。なのに艦隊参謀としても優秀だ。実に面白い」
「面白い、ですか?」
「君の前任者……ええと、たしかヨゼフ=ピラート中佐だったかな? 彼も君と同じような結論に達してたよ。まぁ彼は後方支援科出身で、資材調達畑が長かったと言っていた。君とは正反対で、前線での武勲など全くなかったが、長らく後方の現場を見てきてそう思ったんだろうね」

 まるで覇気のない。実働部隊を軽蔑すらしていた、汚職軍官僚のテンプレのようなピラート中佐の捨て台詞が、俺の頭の中ではっきりと再現される。

 今の俺の仕事の一つである行政側と軍部の意見調整の場をコーディネートする場面で、前線勤務が全くない三〇歳後半から四〇歳の中佐というのは、相当軽く見られていたに違いない。意見を言う軍側は中佐の調整を無視して図に乗り、逆に行政側は中佐のことを全くあてにしない。結果として中佐の仕事に対する熱意が低下するのも理解できる。

 しかも出身が資材調達となれば、軍需物資を生産する多くの民間企業と密接に関わる分野だ。過度の徴兵による生産人口の量と質その両方の低下と、納入される製品自体の品質低下や輸送能力の低下を目の当たりにして、国家としてまともに戦争ができる状況ではなくなりつつあると判断した。

 そういった視点を持つピラート中佐にとってみれば、エネルギーや兵器そして将兵を消耗しながら武勲を求めて投機的な冒険にのめり込む実働部隊の人間など、心底唾棄すべき存在としか思えないだろう。ましてそんな実働部隊の人間が、ただただ前線での武勲がないことで中佐を軽視するとなれば、ああいう態度になるのも当然だ。

 その上で戦争を継続しつつも低下しつつある軍需関連企業の能力を維持する為に、公的資金の投入や行政的なフォローが必要であること。その為には政治家にも働いてもらわねばならず、潤滑油として本来は必要のないはずの『手数料』も作り上げなくてはならない。そういった残念な現実を無視して、部下なのに教条的に腐敗した政治家と軍官僚として自分を軽蔑してくるエベンス少佐など、中佐にしてみれば本当にクソの役にも立たないといったところだろう。

 彼自身はきっと望まなかっただろうが、もっとピラート中佐
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