第98話 人と人
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以外変わらぬインスタントヌードルを啜っている。ちなみにオッサンの食べているヌードルの味は塩バター味ではない。
「しかしなんで軍人らしからぬ軍人だと、官僚の皆さんの評価が高くなるんです?」
マーロヴィアやエル=ファシルで文官官僚にも多くの知己を得たが、両方とも俺一人のやった仕事ではない。マーロヴィアで言えばパルッキ女史、エル=ファシルならクロード=モンテイユ氏が中心で、俺もそれなりに仕事はしたつもりだが、彼らに比べればずっと軍のフォローも大きく、かつ任務も主体的ではなかった。
そんな俺の疑問にもっさりとした七三になりつつあるオッサン……ホワン=ルイ議員は、カップに残っているスープを喉に流し込み、口を手で拭ってから、は〜っと腹の底から呆れたように息を吐いた。
「君は鏡で自分の顔を見たことがあるかい?」
「それは、はい。毎日」
「その鏡に映る青年は、日夜暴虐非道なる帝国の奴らと戦う、勇気と力に溢れた、タフで剛直な正義の味方の権化のような軍人に見えるかい?」
「見えません」
そういうのはウィレム坊や(ホーランド)の得意とする分野だ。あいつなら軍服の下にSのマークの入ったスーツを着てても違和感はない。
「人徳がありそうで、見るからに包容力と器量に溢れた、市民にとって実に頼りがいのある軍人かい?」
「いいえ」
それは明らかにシトレだろう。たとえトリューニヒトであろうとも、頼りがいのある軍人という評価を否定することは出来ない。
「知性に溢れ、どんな不利な戦場にあっても勝利をつかみ取ることのできる、冷静沈着な軍人かい?」
「絶対、違いますね」
まぁ脳細胞の中身が覚醒している時のヤンがそうだろうなぁとは思うが、少なくとも俺ではない。
「だろうね。私もそう思う。良いところ上級星域……う〜ん、そうだな。ケリムあたりの行政府の政策企画局で、利害関係が面倒な資料を作っては、議員にダメだしされて徹夜ばかりしている小役人に見えるよ」
「ちょっと具体的に過ぎません?」
それは惨憺たる評価というよりも、前世の俺(民間企業だったが)相応の評価だったので、頭を垂れて中華風味ヌードルの液面を見つつ苦笑するしかない。
「でもね。前線に辺境にと死線を潜り抜けてきた軍人が、戦場に出たこともないヒョロヒョロ行政官にそんな評価をされたら、机を叩いてブチギレて、頬をぶっ叩くぐらいのことはしかねないんだよ」
俺は思わず顔を上げてホワン=ルイの顔をまじまじと見る。そこには先程まで人好きするニコニコ顔を浮かべていた温和なオッサンではなく、真剣な目をした一人の政治家がいた。
「軍人さんがこの国を守ってくれる事には敬意を表するさ。そりゃあ当然だよ。だからと言って暴力を背景に、なんでも物事が通ると思うのは流石に傲慢ってことなんだ」
「……小官
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