第五幕その九
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「ですが」
「他のものはですね」
「合わなかったのでしょうね」
「あの人もですね」
「そして」
それでというのです。
「さらにです」
「塞ぎ込んで」
「大変だった様ですね」
「ロンドンでの暮らしはよくなかったと」
夏目漱石さんのそれはというのです。
「知られていますね」
「それは私も聞いていました」
「そうでしたか」
「はい、ただ」
堀与さんはさらに言いました。
「彼の弟子筋の芥川君は」
「芥川龍之介ですね」
「非常に優秀で」
そうであってというのです。
「機関学校で英語を教えてくれていました」
「作家になる前そしてなって暫くは」
「はい、彼は抜群の秀才で」
そうであってというのです。
「英語の本もです」
「どんどん読破していましたね」
「そうでした」
「英語に堪能で」
「漢文にも強くてです」
「古文もよく読めましたね」
「実に凄い若者でした」
芥川という人についてこう言うのでした。
「彼は」
「それで有名でしたね」
「ですが夏目君も芥川君も」
二人共というのです。
「まだやれるのでは」
「そうした時にですね」
「世を去りました、無常ですね」
先生に達観した様に言いました。
「世の中というものは」
「人の一生はわからなくて」
「そうです、芥川君の自殺は」
この人がそれによって人生を終えたことはというのです。
「今も言われていますね」
「はい、何かと」
先生も否定しません。
「議論され続けていますね」
「研究もされていますね」
「文学において」
「あの小説は碌でもない者が書くとされていて」
「学者になるとですね」
「とてもです」
それこそというのです。
「読む様なものとはです」
「明治の初期はそう思われていましたね」
「今とは全く違いまして」
それでというのです。
「何かとです」
「否定されていましたね」
「そうでした。ですが」
それがというのです。
「今は違いますね。夏目君も」
「文豪として知られています」
「誰もが知っている様な」
「そうです」
「そうですね、あの頃は」
さらにお話するのでした。
「夏目君は帝大を出て院まで進み留学もした」
「優秀な学者さんであり教師ですね」
「そうなると思われていました」
「そこが違いますね」
「この時代では文豪ですが」
そう思われているけれど、というのです。
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