第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その2 (旧題:マライの純情)
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は、生の実感が乏しく、自傷行為に走りがちだ。
リストカット、薬物の過剰摂取、不純異性交遊……
男でも脱落する戦術機の衛士勤務も、ある種の自傷行為とも受け取れる。
母メルセデスの事を反面教師としての、非常に強い信仰心と貞操観念も同じだ。
ここで、ユルゲンという彼女の精神の支えに何か不都合が起きれば……
このまま、軍隊にのめり込んで、家庭の幸せや、女としての生活を捨ててしまうのではないか。
そんな薄幸の美少女を、救ってやりたい……
この時、マサキは、アイリスディーナに対して、男としての強い欲望を感じた。
マサキが紫煙を燻らせながら、悶々と思いあぐねてる時である。
何気なくアイリスディーナの顔に目線を移した。
アイリスディーナが見つめていた。
「どうか、木原さん、兄さんやマライさんを救ってあげてください……
どのような事になっているか、わかりませんが……」
いつもの優しい声がしたが、マサキは視線を外すことも、身動きすらも出来なかった。
マサキは商人服に着替えると、その日の内に、ニューヨークに飛んだ。
アイリスディーナの話を総合すれば、ニューヨークにいるユルゲンに何かあったらしいことが判明した。
どんな内容の事か、誰と接触したかは、現地を調べてみないとわからない……
ニューヨークの日本総領事館を頼るしかないのか……
そう考えている時である。
現地時間の15時前に、涼宮総一郎から、連絡があった。
彼は、コロンビア大学の留学生で、マサキの護衛を務める白銀と懇意にしている間柄だった。
「木原先生、ベルンハルト大尉の奥さんの事を知りませんか」
この話を聞いたとき、マサキはキツネにつままれた感覚に陥った。
ユルゲンの妻、ベアトリクスは、今、産休でベルリン郊外の実家にいるはずだ。
そんな判り切ったことを、なぜというのが第一印象だった。
しかし、詳しく聞いてみると、涼宮の言う妻というのはマライの事を指し示いるらしいことが分かった。
どうやら、留学中にマライを自分の妻として周囲に紹介していたらしい。
そのことが、この誤解の原因だった。
マサキは、マライの姿が見えなくなったことを恐れた。
まさか、誘拐事件ではあるまいか。
散々、ソ連や東側諸国の誘拐事件を経験してきた彼は、第一番にそのことが頭に浮かんだ。
FBIとニューヨーク市警に連絡を入れた後、美久や白銀と手分けして、ニューヨークの街中を探すことにしたのだ。
時は1979年。
この時代は、携帯電話もポケットベルもない時代である。
捜索には困難を極めると思ったが、偶然立ち寄ったセントラルパーク内の動物園にいる所で彼女と再会した。
「よお、マライ、久しぶりだな」
背中を向けて
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