第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その1 (旧題:マライの純情)
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、ソ連は連合国からほぼ1万4千機の戦闘機を、軍事援助として供給された。
その時は、1万機がアメリカから、約4千機がイギリスから供与された。
今回もまた、米国議会の同意の元、2500機が貸与されることとなった。
ソ連は、 また、労働党政権下の英国にも、支援を打診した。
「同機は輸出を目的としていない」という冷たい返事だった。
にもかかわらず、その後、ブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーションより、150機のトーネードADVが供与された。
近接密集戦闘を主眼に置くソ連では、装甲を軽量化し、機動性を向上させたトーネードは喜ばれなかった。
低空で、複雑な三次元機動をすると、簡単に失速し、きりもみ状態に陥ってしまった。
とはいえ、このイギリス機は、全体の勝利に貢献した。
それは、ソ連にとって開戦初期の戦術機の不足が深刻だったときの最も困難な時期に登場し、ソ連が持ちこたえるのに役立った。
赤軍のより進んだ改良型のソ連製「バラライカ」が納入され始めると、トーネードは、極東の国土防空軍にまとめて送られるようになった。
ユルゲンは、戦術機という兵器の成り立ち、ソ連及び東欧諸国への影響、そして今後の世界情勢に与える結果を考えていた。
長い時間、二人は立ったまま、抱き合っていた。
ユングは、かつてこれほどまでに、キスの洗礼を受けたことがなかった。
情報部員とは言っても、荒事をやる工作員ではなく、現地での公然非公然の資料を収集する情報将校である。
キスの味が、これほど甘美であることを知らなかった。
それだけに、ユングは狼狽し、彼女は時間の感覚を失った。
ユルゲンは、夢を見ている感覚だった。
しかし、彼が経験したことは、まぎれもない現実だった。
不思議なものである。
本来ならば、敵対する陣営の二人なのだが、今は憎しみも嫌悪感もすっかり忘れ去ってしまった。
あるのは、ドイツ統一をするという一つの目的に向かって、ひた走り、協力し合う関係になっていた。
ユルゲンは興奮し、息をつめて、ユングのブラウンの目を凝視した。
「奇麗な目の色だ」
嘘偽りない男の声は、28歳の女情報員に、沸々と湧き起こる官能を意識させた。
「いえ、嘘でしょう」
「本当さ」
若いだけあって、一旦決断をすれば、切り替えも早い。
ドイツ民族が求めてやまない、統一への道へ向けて、一気にひた走ることにした。
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