第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その1 (旧題:マライの純情)
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今しかチャンスがないのよ」
彼女は初めて、狼狽えの色を表した。
静かでいた瞳よりは、心さわがしい瞳のほうが、より一層美しさを増していた。
たちこめるバニラの香水の甘い香り、しな垂れかかる柔らかいからだ。
大きくあいたドレスの襟ぐりから見える、豊かな谷間を形成する豊満な双丘。
突然、意中の者同士がなんらの前提もなく密会の機に恵まれる。
そのようなときめきを、ユルゲンはとたんに覚えた。
「お願い、私を助けて……」
ユングは、はっきりとそういった。
ユルゲンはビックと反応した。
まさか、面と向かってそんな事を言ってくるとは思わなかったからだ
いつの間にか、ユルゲンはユングを抱きすくめていた。
柔らかくて、ぬくもりのある、優美な肢体。
絹のような栗色の髪から、香り立つバニラの甘い匂いが、顔をなぶる。
沈黙があった。
ユルゲンの息をのむ気配が伝わってくる。
灼けつくような視線を感じる。
それにつられて、ユングも妖しい雰囲気になってきた。
抱きすくめていた腕の中で、その顔が切なげに揺れ動く。
「どうして、俺の事を……」
ユルゲンはそう呼びかけると、一層、抱擁を強めた。
そして二人の体は身じろぎもせず、岩のように立ったままだった。
戦術機のコンピューターに、情報を筒抜けにするカラクリがしてある。
この話を聞いて、ユルゲンは、何か思いある節があった。
もともと戦術機は、この異世界の米ソが、1960年代から使用していた有人操縦ユニットを起源する。
宇宙空間や衛星軌道上での使用を目的に、大型化し、発展させた。
航空機やヘリコプターにない三次元機動を持ち、ハイヴ攻略を目的として作られた。
そして、BETAの地球侵攻の1年前である1972年に完成し、日本や英、仏や西独を始めとするEC諸国との間でライセンス生産を開始する秘密協定を結んだ。
ソ連への提供は、1973年の後半に行われ、その時には、既に寒冷仕様のF-4Rが完成されていた。
マグダネル社の方で、モスクワにあるミグ設計局の兵器工場に、新設機械を設置した建屋を建造し、熟練技師を派遣するほどの力の入れようだった。
ソ連への支援は、当初、米国議会の承認を得られなかった。
故に、先次大戦のB-17譲渡を踏襲する形で行われた。
かつてソ連赤軍が、B−17爆撃機を欲したとき、表向き米政府は断った。
だが、東欧諸国に、計器類が破壊されたB−17爆撃機を乗り捨てる形で、米軍は間接的にソ連に
B-17を提供した。
今回も、その顰に倣って、50機のF−4Rファントムが、カスピ海沿いの都市・アスタラに乗り捨てる形で、ソ連赤軍に供給された。
ソ連の技術陣は、遺棄された戦術機を組み直して、戦闘に用い、緒戦を乗り切った。
先次大戦の折
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