暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
姿なき陰謀
隠然たる力 その1 (旧題:マライの純情)
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色の髪が背中に波打ち……
ああ、俺は何を考えているのだ。
 酔いが回っていなければ、そんなことも考えもしないのに……
彼女の美しいうなじに視線を奪われていると、女の方から声がかかった。
「わたしね。ニューヨークの西ドイツ総領事館で、副領事の補佐をしておりますの。
前から一度、東ドイツを代表する、第一戦車軍団の戦術機隊幕僚長とお会いしたいと思っていましたの」
 そんな因縁がなくとも、普段なら決して相手にしてもらえないような上流階級の女性。
それも婀娜(あだ)っぽい色香をムンムンと発散させた妖艶な女性から誘いを受ければ、若い彼は一も二もなく付いて行ってしまう。
「貴方は、最愛の妹さんを、ゼオライマーパイロットの木原マサキに近づけたそうね」 
 そういって、彼らは、セントラルパークに場所を移した。
いつの間にか、公園の北側にある、コンサバトリーガーデンにある噴水の前に来た。
近くにあるベンチに腰掛けるなり、ユングの方から話しかけた。
「木原と、どの程度の間柄は判りませんけど……
知ってることは、すべて話したと考えてよさそうね」
 ユルゲンは、苦笑をたたえた。
女とはいえ、尋常(じんじょう)な不敵さではない。
「お近づきのしるしとして、ベルンハルト君、いくつか、重要な事を教えてあげるわ。
もう貴方は、一線に復帰することはないだろうから」
 ユルゲンは、この留学に伴って、指揮幕僚過程への栄転が内々に約束されていた。
駐在武官補佐に選ばれたのも、将来の高級将校の足掛かりとしてである。
 駐在武官に求められるのは、情報収集・分析能力はもちろん、英語・露語・仏語をはじめとする語学能力。
接受国の政府・軍などのカウンターパートと、関係を築くためのコミュニケーション能力。
求められる範囲と内容は、前線勤務の将校に比べて、幅広い。
「実はね、この数年間、欧州諸国が戦術機の新規ソフトウェア開発にかけていたことは全く無駄だったのよ」
「どういうことです。
戦術機のソフトウェア開発が、西ドイツですら、できないという事ですか」
「そういうこと。
管制ユニットの中にあるコンピューターには、メモリープロテクタという一種の遮断機がついていて、これが作動している限り、外部の技術者が、たとえKGBやシュタージの産業スパイがどんなことをしても、システムは書き換えることが出来ません」
「なぜそんなものを!では俺たちを騙していたという事ですか」
「たしかに、そうなるかしら。
でもそれはマクダエル・ドグラムや、IBMの一存ではないのよ。
CIAから聞いた話を総合するとね、合衆国政府の意向だったの」
ユングは、躊躇いもなく、自分の知る情報の全てを明かした。
「彼等の見解では、戦術機の動作に関して、ソ連政府や西側諸国が数年は我慢するだろうという
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