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冥王来訪
第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その2
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を及ぼす人物とは思ってもいなかった。
「まあ、つまらない愚痴はこれくらいにして、F-14の飛行試験に行きましょう」
そういうと、クゼ大尉は部屋を出た。

 強化装備に着替えたユルゲンとクゼ大尉は、F‐14の機内にいた。
各国軍への性能アピールを兼ねたF‐14の試乗試験を行うためである。
 戦術機の搭乗員資格を持つ衛士を火器管制用の後部座席に座らせ、前部座席には操縦士役の米海軍将校が登場し、機体の性能を説明するためである。
 最新鋭のF‐14は、それまでのF−4系統とはコンピューターシステムが全く違った。
米軍の開発したGPSシステムに依存し、遠距離からの射撃戦を重視した作動系統になっている。
 一応、格闘戦用として膝の部分に近接短刀が内蔵してあるが、これは衛士の希望で追加したもので、ハイネマンの図面ではなかったものである。
 米海軍では、1958年9月24日に発生した金門馬祖周辺での中共軍と国府軍の空戦以降、格闘戦を避ける傾向にあった。
この時、数に劣る国府軍の戦闘機32機がサイドワインダーミサイルによって、100機以上を誇る中共軍を撃退したからだ。
 格闘戦は、瞬間的な空間認識能力が求められるためである。
相手を視認できる距離での戦闘では、パイロットの死傷率は格段に跳ね上がった。
極力、視認できる範囲外からのミサイル攻撃へと依存していった。
 かといって、ミサイル万能論に陥ったわけでもない。
ベトナム戦争でのソ連空軍機との戦闘で、機関砲を搭載しない航空機では運動性の高い戦闘機との接触を果たした際に格闘戦が行うことが出来なかったからだ。
 BETA戦争の場合は、光線級の脅威よりも戦術としての重金属雲による視認低下が大きかった。
通信障害やGPS誘導装置を狂わせるバリア体のために、場合によっては格闘戦をせざるを得なかった。
 止む無く近接短刀を追加装備に加えたが、米海軍の要求としては12.7ミリのM2重機関銃を搭載する予定であった。
要塞級を除くBETAの殆どは、対空砲や車載型の重機関銃で対応可能だからである。
 それに要塞級はフェニックスミサイルを使えば、簡単に撃滅できる。
これが米海軍の、いや、米軍の基本的な対BETA戦術の中心であった。
「トリム 0度OK、調整OK。ANTI SKID SPOILER BK S/W BOTH」
 滑走路上で、F‐14を移動するクゼ大尉の機動を見ながら、ユルゲンはぼんやりと米ソ両軍の戦術を考えていた。
大火力を中心とする米ソ両軍の攻撃方法は、資金力と兵器貯蔵量を誇る超大国だからできる方策である。
東欧の小国である東ドイツでは、到底無理な話だ……
民族の存亡をかけたBETA戦争においては、彼らの力によるところが大きい。
 時代的な制約も大きかった。 
この1970年代
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