第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その2
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ルゲンは思わず振り返った。
設計主任のフランク・ハイネマン博士であった。
「初めまして、ハイネマン博士、お会いできて光栄の極みです」
いささか興奮気味に、ハイネマンの差し出した右手を握る。
ハイネマンは、ユルゲンの気持ちをよそに、不敵の笑みを湛えながら、
「ベルンハルト大尉、君の来歴は色々伺っているよ。
私の事は、フランクとか、ハイネマンで構わないよ」
ハイネマンは内心、大喜悦であった。
目の前にいる白皙の美丈夫は、今まさに自分に熱心に教えを乞うているという様を楽しんでいた。
彼自身が、小柄で風采の上がらない科学者であったことも、関係があるのかもしれない。
しかし、何よりの喜びは敵側であった東ドイツの戦術機部隊長が自分の作品を手放しでほめてくれることであった。
表向き、ソ連参謀本部が考えたことになっている光線級吶喊。
しかし、ハイネマンは、その提案者が目の前にいる堂々たる美丈夫であることを知っていた。
あの光線級吶喊の提案者が、自分の作品を手放しで絶賛している。
ユルゲンの変わりようは、ハイネマンをして、狂喜させた。
「いや、実に素晴らしい。とくにフェニックスミサイルがあれば、ずいぶん楽になるだろう。
是非とも、ドイツ語の資料を頂けませんか!
きっと、シュトラハヴィッツ将軍に見せたら、お喜びのはずです」
ユルゲンの思いがけない狂乱ぶりに、欣喜雀躍したハイネマンは、
「遅くとも明後日には、英語と独語の資料をニューヨークの総領事館にお送りしましょう」
内心でにんまりしながら、少し上半身を後方にずらした。
既にF‐14の機体の魅力に取りつかれたユルゲンは、ほかの事をかえりみることなく、ひたすら試乗体験という最終目標に突き進んでいた。
胸が痛くなるような興奮が、青年将校を包んでいた。
「F-14トムキャットは、最新のスーパーコンピューターを積んでいるんですよ」
「どんなものですか」
「オペレーション・バイ・ワイヤー。
機体の操縦処理に新型のコンピューター処理を挟む方式で、パイロットの反応を一部、コンピューターで予想しながら、補正するプログラムです。
これにより、F-14は、T型フォードから、オートマの64年型マスタングになった様なものですよ」
ホスト役のクゼ大尉も、探求心旺盛なユルゲンにとってもよかった。
何でも細かいことまで、答えてくれて、尚且つ実戦経験豊富な海軍大尉の海容さに、ユルゲンは満足していた。
普段では出来ないような経験も、青年将校をウキウキさせた。
「ベルンハルト大尉は、光線級には大分苦しめられたでしょう」
「ええ」
思い出すだけでも、嫌になる。
それがユル
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ