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冥王来訪
第三部 1979年
姿なき陰謀
権謀術数 その1
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G−1フライトジャケットを身に纏っていた。
 3オンスのゴートスキン製ジャケットは、空調機能の整ったジェット機の時代には不要だった。
だが、海軍操縦士(アビエータ―)の証しであることには変わりがなかったので、米海軍の衛士たちは好んで身に付けていた。
 ユルゲンは、男の方に振り返ると、教本の様な陸軍式敬礼で応じた。
「初めまして、海軍大尉のクゼです。どうかお見知りおきを」
 海軍式の敬礼をした男は、日系人のクゼ大尉だった。
クゼは、またあらためて、ユルゲンへ頭を下げていた。
「先ほどのロシア語でのお呼びかけ。さぞ不振に思われたでしたでしょう。
何とぞ、平にお許しを……」
「いや、こちらも先ごろまでソ連麾下のワルシャワ条約機構にいた身の上。
致し方ないことと、思っております」
 二人の青年将校は、一頻り自分たちの身の上話に花を咲かせた。
やがて、ユルゲンが言った。
「一つお尋ねしたいことがありますが……」
 ユルゲンの話はこうだった。
ソ連では光線級に対して、ミサイル攻撃を繰り返したが、大して効果がなかった。
 戦闘ヘリや戦術機に搭載した突撃砲で対応した経験から、大型ミサイルを搭載した
F‐14の有用性が理解できないという。
 その疑問に対するクゼ大尉の意見は簡単だった。
「海軍戦術機に求められる事は、まず一番に戦域制圧能力です。 
海岸線上陸作戦、その支援が海軍戦術機の存在理由と、小官は考えております」
 確かに、米海軍はそうなのだろう。 
しかし、東ドイツのような陸軍国が有する弱小海軍の場合は、どうであろうか……
クゼ大尉の答えに、若干の疑問符が付く。
「もっとも合衆国海軍の場合ですが、戦術機による戦域制圧能力を突き詰める必要性は、必ずしもありません。
戦艦による大口径艦砲の射撃、ミサイル巡洋艦による地対艦ミサイルの飽和攻撃。
面制圧は、それをもってすれば、事足ります。
戦術機は近接航空支援、むしろ海兵隊の様な運用へと変化しつつあります」
上陸後の近接航空支援という言葉に、ユルゲンはいささか不安を覚えるほどであった。
「あまり飛行高度が高いと、撃墜される可能性が……」
「それは今から見せる新兵器をご覧になれば、納得できるはずです」
 ユルゲンは素直にうなずいてみせた。
しかし一歩も、自分の考えを譲っているのではなかった。
「つまりは、上陸後の支配戦域拡大の為。 つまりは、地上で正面切って敵部隊と戦う為と……」
 それ以外の目的はあるだろう。
だが、今はむやみに聞き出さない方が良い。
 どういう形で、自分に米海軍の関係者が近づいたのだろうか。
 いや、待てよ……
この日系人の大尉は、自分の妹がゼオライマーのパイロットとの恋愛関係になっているのを知っているかもしれない。
 そう思うと
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